簿記検定

簿記検定(日商簿記)は、日本商工会議所・各地商工会議所が実施する簿記の検定試験です。企業の取引を帳簿へ記録し、決算を行い、財務諸表を作成・読み取るための知識を段階的に学べます。

一般に「日商簿記」と呼ばれ、1級・2級・3級・簿記初級が設けられています。特に3級は簿記の基本、2級は商業簿記に加えて工業簿記・原価計算まで扱う実務寄りのレベル、1級は会計学・原価計算まで含む高度な試験です。

2026年現在、2級・3級は従来の統一試験に加えてネット試験でも受験できるため、受験機会が多いのが特徴です。一方、1級は統一試験のみで実施され、税理士試験の受験資格につながる難関レベルとなっています。

日商簿記を30秒で確認

  • 資格区分:商工会議所の検定試験
  • 実施:日本商工会議所・各地商工会議所
  • 受験資格:制限なし
  • 級:1級・2級・3級・簿記初級
  • 2級・3級:統一試験とネット試験を実施
  • 1級:統一試験のみ
  • 2026年度受験料:1級8,800円、2級5,500円、3級3,300円、初級2,200円
  • 合格基準:1級は70%以上かつ各科目40%以上、2級・3級・初級は70%以上
  • 2026年6月統一試験合格率:1級21.2%、2級15.1%、3級33.8%
  • 2026年4~6月ネット試験合格率:2級31.9%、3級44.5%
  • 当サイトの学習時間目安:3級80~150時間、2級250~400時間、1級700~1,200時間
  • 主な活用:経理、財務、会計、経営管理、税務・会計資格へのステップ
資格名 簿記検定(日商簿記)
実施団体 日本商工会議所・各地商工会議所
受験資格 制限なし
級 1級・2級・3級・簿記初級
1級試験時間 前半90分+後半90分
2級試験時間 90分
3級試験時間 60分
初級試験時間 40分
主な対象 経理・財務を目指す人、会計知識を身につけたい学生・社会人、税理士等を目指す人

簿記検定(日商簿記)とは

簿記とは、企業や個人事業の取引を一定のルールに従って記録・計算し、最終的に損益計算書や貸借対照表などへまとめる仕組みです。売上が増えた、商品を仕入れた、設備を購入した、借入金を返済したといった経済活動を数字で整理します。

日商簿記では、級が上がるにつれて「記録できる」だけでなく、「決算できる」「原価を計算できる」「財務諸表を分析できる」「会計基準に基づいて高度な処理ができる」レベルへ発展していきます。

級 学ぶ内容 目標レベル
簿記初級 簿記の基本原理、基本用語、日常取引 簿記の仕組みを理解する入門
3級 商業簿記、仕訳、決算、財務諸表 小規模企業を想定した基本的な経理
2級 商業簿記+工業簿記・原価計算 企業経理で使う幅広い会計知識
1級 商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算 高度な会計基準・管理会計まで扱う専門レベル

就職・転職を目的にするなら、まず3級→2級の順で考えるのが現実的です。

3級は簿記の土台を作る資格、2級は商業簿記に工業簿記まで加わるため、経理実務を意識した学習へ進みます。1級はさらに専門性が高く、税理士や公認会計士など次の資格を目指す人にも適しています。

2026年度の試験概要

級 科目 時間 合格基準 受験料
1級 商業簿記・会計学/工業簿記・原価計算 90分+90分 70%以上かつ各科目40%以上 8,800円
2級 商業簿記・工業簿記(原価計算を含む) 90分 70%以上 5,500円
3級 商業簿記 60分 70%以上 3,300円
初級 簿記の基本原理・日常業務 40分 70%以上 2,200円

2026年度の統一試験日

回 試験日 実施級
第173回 2026年6月14日 1級・2級・3級
第174回 2026年11月15日 1級・2級・3級
第175回 2027年2月28日 2級・3級

1級は6月・11月の年2回です。2級・3級は統一試験が年3回あるほか、ネット試験会場で随時受験できます。

2級・3級のネット試験

2級・3級にはネット試験方式があります。パソコンを使い、選択式・入力式で解答します。試験時間は2級90分、3級60分で、統一試験と同じ合格基準です。

ただし、統一試験の前後にはネット試験の施行休止期間が設定されます。2026年度は、4月1日~13日、6月8日~17日、11月9日~18日、2027年2月22日~3月3日が休止期間です。

「2級は60分」は古い情報です。

現行の2級は90分、3級は60分です。旧記事や古い教材では旧制度の試験時間が残っている場合があるため注意してください。

3級の出題内容

3級は商業簿記のみで、仕訳、帳簿、決算整理、財務諸表などを学びます。簿記を初めて学ぶ人にとって最初の本格的な級です。

仕訳

取引を借方・貸方へ分けて記録します。現金、売掛金、買掛金、商品売買、固定資産、税金など、頻出取引を正確に処理できる必要があります。

帳簿と勘定

仕訳帳、総勘定元帳、補助簿などの関係を理解します。単に記入方法を覚えるだけでなく、取引がどの帳簿へ流れるかを把握することが大切です。

決算

期末には、売上・費用の整理、減価償却、貸倒れ、経過勘定などを処理し、損益計算書・貸借対照表へまとめます。3級ではここが最も学習量の大きい分野になりやすいでしょう。

2級の出題内容

2級になると、商業簿記の難易度が上がるだけでなく、製造業を対象とする工業簿記・原価計算が加わります。3級との最大の違いは、学習対象が「商品売買中心の会計」から「企業全体の会計」へ広がることです。

商業簿記

株式会社会計、連結会計、税効果など、3級より高度な処理を扱います。個別論点を覚えるだけではなく、決算全体の中で処理できることが必要です。

工業簿記・原価計算

製品を作るために、材料費・労務費・経費がいくらかかったかを計算します。個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算などが中心です。

2級では工業簿記を得点源にできるかが重要です。

初めは専門用語が多く見えますが、計算構造を理解すると得点が安定しやすい分野です。商業簿記だけで合格点を狙うのではなく、工業簿記で確実に得点できる状態を作りましょう。

1級の出題内容

1級は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目で構成されます。試験時間は前半90分、後半90分です。総得点70%以上に加えて、1科目でも40%未満だと合格できません。

商業簿記・会計学

高度な企業会計、会計基準、連結、企業結合、純資産、金融商品などを扱います。仕訳を覚えるだけでなく、会計基準の考え方まで理解する必要があります。

工業簿記・原価計算

製造原価の計算に加えて、意思決定や業績管理に使う管理会計の知識が必要です。CVP分析、予算、差異分析、設備投資意思決定など、経営判断に近い問題も出題されます。

1級合格者の特典

日本商工会議所は、日商簿記1級合格者について税理士試験の受験資格が与えられることを案内しています。大学等の学識要件を満たしていない人が税法科目を受験する際のルートの一つになります。

日商簿記で苦戦しやすいポイント

級・分野 難しい理由 対策
3級・仕訳 勘定科目と借方・貸方が混乱しやすい 取引を文章で説明してから仕訳へ変換する
3級・決算 複数の決算整理を同時に処理する必要がある 決算整理仕訳→集計→財務諸表の流れを反復する
2級・連結会計 個別会社の会計と連結修正を分けて考える必要がある 取引消去・成果消去などを論点別に練習する
2級・工業簿記 製造業特有の勘定の流れが見えにくい 材料→仕掛品→製品→売上原価の流れを図にする
1級・会計学 計算だけでなく理論理解が必要 会計基準の目的と処理をセットで理解する
1級・原価計算 意思決定・管理会計の応用問題が多い 公式暗記ではなく条件と計算構造を理解する
全級・時間配分 1問に時間を使いすぎると後半を失う 本番時間で問題を解き、解く順番を固定する

2026年の合格率

統一試験

級 回 実受験者数 合格者数 合格率
1級 第173回(2026年6月) 9,806人 2,076人 21.2%
2級 第173回(2026年6月) 4,821人 728人 15.1%
3級 第173回(2026年6月) 14,359人 4,854人 33.8%

ネット試験

級 期間 受験者数 合格者数 合格率
2級 2026年4~6月 33,659人 10,749人 31.9%
3級 2026年4~6月 64,183人 28,546人 44.5%

統一試験とネット試験では、実施方式や受験者層が異なるため、合格率だけを見て「ネット試験の方が簡単」と断定することはできません。ネット試験では受験日を選びやすく、準備が整ったタイミングで受験できる点も数字に影響すると考えられます。

過去数回の1級合格率

回 合格率
第173回(2026年6月) 21.2%
第171回(2025年11月) 15.2%
第170回(2025年6月) 14.0%
第168回(2024年11月) 15.1%
第167回(2024年6月) 10.5%

1級は回によって合格率が大きく動きます。2026年6月は21.2%と比較的高い結果でしたが、過去には10%前後の回もあります。単年度の合格率だけで難易度を判断しないことが重要です。

日商簿記の勉強時間

日本商工会議所は合格に必要な標準学習時間を公表していません。以下は、当サイトで想定する学習時間の目安です。

級 初学者の目安 前提知識がある人 重点
3級 80~150時間 50~100時間 仕訳と決算
2級 250~400時間 180~300時間 工業簿記と商業簿記の応用
1級 700~1,200時間 500~900時間 会計学・原価計算・高度論点

3級から2級へ進む場合は、3級内容を理解している前提で2級学習を進められるため、最初から2級だけを学ぶより理解しやすくなります。1級では範囲が大幅に広がるため、2級合格後も長期学習を想定した方が現実的です。

日商簿記の勉強方法

1. 仕訳の意味を理解する

最初は勘定科目を暗記するのではなく、「資産が増えた」「負債が減った」「費用が発生した」と取引の意味を考えます。仕訳が安定すると、その後の帳簿・決算が理解しやすくなります。

2. 個別問題から総合問題へ進む

各論点の基本問題を解いた後、複数論点が混ざった総合問題へ移ります。特に決算や連結会計は、単独論点だけでは本番対応力が不足しやすくなります。

3. 工業簿記は勘定の流れを図にする

2級では、材料、仕掛品、製品、売上原価がどのようにつながるかを図で理解します。計算式だけ覚えるより、原価がどこへ流れるかを把握した方が応用に強くなります。

4. 間違いを種類別に記録する

知識不足、仕訳ミス、集計ミス、電卓ミス、問題文の読み違い、時間不足に分けます。「同じ問題を解き直す」だけでなく、ミスの原因をつぶすことが得点安定につながります。

5. 本番と同じ時間で解く

3級60分、2級90分、1級は90分+90分です。試験直前は本番時間で演習し、どの順番で解くかまで決めます。

6. ネット試験受験者は入力操作も練習する

2級・3級ネット試験では、仕訳の勘定科目選択や金額入力があります。紙だけで勉強している人は、サンプル問題などを使って画面操作にも慣れておきましょう。

学習スケジュール例

3級を3か月で目指す場合

期間 学習内容 目標
1か月目 簿記の基本、仕訳 主要な取引を自力で仕訳できる
2か月目 帳簿、決算整理、財務諸表 一連の決算処理を理解する
3か月目 総合問題、模試、ネット試験対策 60分で70点以上を安定させる

2級を6か月で目指す場合

期間 学習内容 目標
1~2か月 商業簿記の基礎~応用 主要論点を一巡
3~4か月 工業簿記・原価計算 原価計算を得点源にする
5か月目 総合問題 商業・工業を時間内に解く
6か月目 模試・弱点補強 90分で70点以上を安定させる

不合格になりやすい原因

失敗 原因 改善
仕訳を丸暗記する 取引条件が変わると対応できない 資産・負債・収益・費用の変化から考える
テキストを読むだけ 計算速度が身につかない 学習時間の半分以上を問題演習へ移す
工業簿記を後回し 2級で安定した得点源を失う 商業簿記と並行して早めに開始する
難問に時間を使う 取れる問題を落とす 解く順番と撤退時間を決める
ネット試験の操作を練習しない 入力・画面移動に時間がかかる サンプル問題で操作を確認する
古い教材を使い続ける 出題区分・会計基準変更に対応できない 受験年度対応教材を使用する

簿記を取得するメリット

メリット 内容
会計の基礎が身につく 財務諸表がどのように作られるか理解できる
経理業務に直結する 仕訳、決算、原価計算など実務に近い知識を学べる
企業分析に役立つ 損益・資産負債・原価を数字で考えられる
上位資格へつながる 税理士、公認会計士など会計系資格の基礎になる
職種を問わず活用できる 営業、企画、管理職でも売上・利益・コストの理解に役立つ

「簿記2級を取れば必ず経理へ転職できる」わけではありません。

求人では資格に加えて実務経験、Excel、会計ソフト、決算経験などが評価されます。資格は会計知識を示す材料ですが、実務スキルと組み合わせることが重要です。

日商簿記を活かせる仕事

職種 活かせる業務
経理 仕訳、月次決算、年次決算、財務諸表作成
財務 資金管理、予算、資金繰り、財務分析
原価管理 製品原価、予算実績、差異分析
経営企画 予算、KPI、事業採算、投資判断
税理士・会計事務所 記帳、決算、申告業務の基礎
営業・管理職 売上、粗利、利益率、コスト構造の理解

どの級がおすすめ?

タイプ おすすめ 理由
簿記を初めて学ぶ 3級 実務にもつながる基礎を一通り学べる
経理への就職・転職を考える 2級 商業簿記と工業簿記を学べる
税理士を目指し受験資格も意識する 1級 合格により税理士試験の受験資格を得られる
簿記が自分に合うか試したい 初級 40分のネット試験で基礎を確認できる
会計専門職を本格的に目指す 2級→1級 高度会計へ段階的に進みやすい

日商簿記と関連資格の違い

資格 主な内容 特徴
全経簿記能力検定 簿記・会計・工業簿記 上級合格でも税理士試験受験資格につながる
建設業経理検定 建設業会計 建設業特有の原価・会計に特化
税理士 税務・会計 税務の国家資格。試験は科目合格制
公認会計士 監査・会計 監査を中核とする国家資格

日商簿記と全経簿記は別試験です。

このページで扱っている「簿記検定」は日本商工会議所の日商簿記です。サイト内には全国経理教育協会の「簿記能力検定(全経簿記)」の記事もあるため、混同しないよう注意してください。

2026~2027年度の制度・出題範囲変更

2026年度は現行の2022年度適用区分表を継続

日本商工会議所によると、2026年度試験には2022年度から適用されている出題区分表が引き続き適用されます。2026年度中に受験する人は、2026年度対応教材を使えば現行範囲へ対応できます。

2027年度から出題区分表を改定

2027年4月1日以降の試験では、新しい出題区分表が適用されます。日本商工会議所は2026年7月31日に確定版を公表しました。

主な背景には、紙媒体による手形・小切手の廃止や、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の適用があります。2026年度と2027年度では教材の対応年度を確認する必要があります。

2027年度受験予定者は「2027年度対応」の教材を確認してください。

特に長期学習となる1級受験者は、学習開始時の教材が2026年度範囲のままにならないよう、改定論点を確認しましょう。

日商簿記に関するFAQ

受験資格はありますか?

ありません。年齢、学歴、職歴に関係なく、希望する級から受験できます。

3級を取らずに2級を受験できますか?

できます。2級に受験資格制限はありません。ただし、2級は3級レベルの商業簿記を前提に学ぶため、初学者は3級内容から学習する方が理解しやすいでしょう。

2級・3級はネット試験と統一試験のどちらがよいですか?

資格としての級は同じです。ネット試験は受験日の自由度が高く、統一試験は紙で解答する方式です。パソコン入力が苦手な人は統一試験、準備が整った時点ですぐ受けたい人はネット試験が選択肢になります。

ネット試験は簡単ですか?

公式には「ネット試験の方が簡単」とはされていません。合格基準も同じです。実際の合格率には受験タイミングや受験者層の違いも影響するため、合格率だけで難易度を断定できません。

独学できますか?

3級・2級は独学で目指す受験者も多い資格です。ただし、問題を読むだけではなく、実際に仕訳・計算を繰り返す必要があります。1級は範囲が広く、会計学・原価計算まで含むため、独学では学習管理の難易度が上がります。

電卓は使えますか?

統一試験では、日本商工会議所が定める範囲の電卓やそろばんを使用できます。プログラム機能、辞書機能などを持つ機器は使用できません。受験前に公式の注意事項を確認してください。

簿記2級は就職に役立ちますか?

経理・財務職で会計知識を示す材料になります。ただし、採用では実務経験、Excel、会計ソフト、決算経験なども評価されるため、取得だけで就職が保証されるわけではありません。

1級に合格すると税理士試験を受けられますか?

日商簿記1級合格者は、税理士試験の税法科目を受験するための資格要件の一つを満たせます。なお、簿記論・財務諸表論は現在受験資格の制限がありません。

合格資格に有効期限はありますか?

合格した級そのものに更新制度はありません。日本商工会議所は統一試験の合格証書について、合格を永久に証明する書類と案内しています。

2027年度に試験内容は変わりますか?

はい。2027年4月1日以降は新しい出題区分表が適用されます。紙の手形・小切手の廃止や新リース会計基準などに伴う改定が含まれるため、2027年度対応教材を使用してください。

日商簿記のまとめ

日商簿記は、企業会計を基礎から高度なレベルまで段階的に学べる代表的な検定です。3級は仕訳・決算の基礎、2級は商業簿記に工業簿記・原価計算が加わり、1級では会計学・原価計算まで扱います。2026年6月統一試験の合格率は1級21.2%、2級15.1%、3級33.8%でした。2級・3級はネット試験でも受験できます。2027年度からは出題区分が改定されるため、受験年度に対応した教材を選ぶことが重要です。

情報確認:2026年10月
主な確認先:日本商工会議所「簿記」「2026年度試験日程カレンダー」「受験者データ」「1級・2級・3級 試験科目・注意事項」「日商簿記検定試験(2級・3級)ネット試験について」「出題区分表」。
公式情報:商工会議所の検定試験・簿記

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