ボイラーおよび第一種圧力容器の製造において、溶接作業を安全かつ適正に行うために必要な国家資格です。労働安全衛生法に基づき、これらの溶接作業を行う場合には資格取得者の従事が義務付けられています。
この資格を取得することで、ボイラーや圧力容器の溶接に関わる業務に従事でき、工場や造船所、建設現場など幅広い業界で活躍できます。
資格区分と業務範囲
ボイラー溶接士資格は、溶接の種類や対象物によって以下の2区分に分かれます。
| 資格区分 | 対象業務 | 主な業務範囲 | 
|---|---|---|
| 普通ボイラー溶接士 | ボイラーや第一種圧力容器の板溶接 | ボイラー本体の板部溶接、圧力容器の接合作業 | 
| 特別ボイラー溶接士 | ボイラーや第一種圧力容器の管溶接 | 管部溶接、配管接続部の高難度溶接作業 | 
目次
受験資格と難易度
1. 受験資格
ボイラー溶接士資格は、普通ボイラー溶接士と特別ボイラー溶接士の2区分があり、それぞれで受験資格が異なります。
普通ボイラー溶接士
以下の条件をいずれか満たす必要があります。
- 満18歳以上
 - 6か月以上のアーク溶接等の実務経験がある者
 - アーク溶接特別教育を修了した者
 
特別ボイラー溶接士
以下の条件をいずれか満たす必要があります。
- 普通ボイラー溶接士免許取得後、実務経験6か月以上
 - 6か月以上の管溶接に関する実務経験がある者
 
2. 難易度
ボイラー溶接士資格試験は、学科試験と実技試験の2つがあり、特に実技試験の難易度が高めです。特別ボイラー溶接士では、管溶接の技術が求められるため、さらに難易度が上がります。
| 資格区分 | 合格率 | 難易度 | 特徴 | 
|---|---|---|---|
| 特別ボイラー溶接士 | 約40〜50% | 高い | 高度な管溶接技術が求められる。実務経験が重要。 | 
| 普通ボイラー溶接士 | 約60〜70% | やや高め | 板溶接の基礎が問われる。未経験者は事前練習が必要。 | 
試験内容
学科試験と実技試験の2部構成です。学科では溶接に関する基礎知識や法令が問われ、実技では実際に溶接作業を行い、外観検査および非破壊検査で溶接品質が評価されます。
区分(普通ボイラー溶接士・特別ボイラー溶接士)ごとに出題範囲や実技内容が異なりますが、基本的な試験構成は共通しています。
1. 学科試験
(1)試験概要
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 試験形式 | 筆記試験(選択式・記述式) | 
| 試験時間 | 約90分 | 
| 問題数 | 約30〜40問 | 
| 合格基準 | 正答率60%以上 | 
| 出題範囲 | 材料、溶接法、溶接装置、施工管理、関連法令 | 
(2)出題科目と内容
| 科目 | 出題内容 | 
|---|---|
| 材料および溶接法 | 溶接材料の種類と特性、溶接方法、溶接欠陥の種類と原因 | 
| 溶接装置および工具 | アーク溶接機やトーチの構造・使用方法、メンテナンス方法 | 
| 溶接施工および溶接管理 | 作業手順、溶接順序、溶接管理のポイント、安全作業の基本 | 
| 法令 | 労働安全衛生法、ボイラー溶接関連規則、作業責任者の義務 | 
2. 実技試験
(1)試験概要
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 試験内容 | 実際の溶接作業(板溶接または管溶接) | 
| 試験時間 | 約3〜4時間 | 
| 合格基準 | 外観検査と非破壊検査で基準を満たすこと | 
| 評価方法 | 外観検査、X線検査(内部欠陥確認) | 
(2)普通ボイラー溶接士の実技試験内容
- 対象: 板溶接作業
 - 溶接姿勢: 立向溶接、水平溶接
 - 課題: 指定された板厚・材質の母材に対して溶接を実施
 - 評価ポイント:
- ビード外観の均一性
 - スラグ除去の適正さ
 - 溶接金属の融合状態
 
 
(3)特別ボイラー溶接士の実技試験内容
- 対象: 管溶接作業
 - 溶接姿勢: 固定管板溶接、立向・斜め溶接
 - 課題: 指定された管径および肉厚の母材を使用
 - 評価ポイント:
- 均一なビード形成
 - 内外面の欠陥有無(ブローホール、割れ、未溶融)
 - X線検査での内部品質確認
 
 
(4)実技試験の評価基準
| 評価項目 | 合格基準 | 
|---|---|
| 外観検査 | ビード幅、溶け込み、アンダーカットが基準内 | 
| 非破壊検査 (X線検査) | 内部欠陥(割れ、ブローホール、未溶接)が許容範囲内 | 
| 作業態度 | 安全器具の正しい使用、作業手順の遵守 | 
試験対策
1. 試験対策の基本方針
(1)学科試験対策
- 公式テキストを2〜3回繰り返し読む
 - 法令問題は表にまとめて暗記
 - 過去問題で出題傾向を把握し、類似問題に慣れる
 - 材料や溶接方法の特徴を理解し、応用問題に備える
 
(2)実技試験対策
- 基本姿勢とトーチ操作を反復練習
 - ビード形成の安定化を目指す
 - 異なる溶接姿勢(立向、水平、斜め)の練習を重点的に実施
 - 実務経験者でも試験仕様の練習を繰り返す
 
2. 科目別の重点対策ポイント
| 科目 | 重点ポイント | 対策方法 | 
|---|---|---|
| 材料および溶接法 | 材料の特性と溶接欠陥の原因を理解 | 材料名・特徴を表で整理し、欠陥例を写真で確認 | 
| 溶接装置および工具 | 溶接機器の構造や操作方法を理解 | 実物を使い操作確認、点検項目を暗記 | 
| 溶接施工および管理 | 適正な溶接順序や安全管理を理解 | 作業手順をノートにまとめ、模擬試験で実践練習 | 
| 法令 | 労働安全衛生法の数字や義務を暗記 | 過去問題を繰り返し解き、頻出法令を重点復習 | 
3. 実技試験の具体的対策
(1)普通ボイラー溶接士(板溶接)
- 立向・水平溶接の練習を繰り返す
 - 適正な電流値と移動速度を確認
 - トーチの角度と距離を安定させる
 
(2)特別ボイラー溶接士(管溶接)
- 固定管板溶接でビードの均一化を目指す
 - 立向・斜め溶接で適正な姿勢とトーチ操作を維持
 - 本番同様の条件で模擬練習を実施
 
(3)実技評価ポイントと対策
| 評価項目 | 合格基準 | 対策方法 | 
|---|---|---|
| ビード外観 | 幅の均一性、適正な高さ | 練習で均一なトーチ移動を習得 | 
| 内部品質 (X線検査) | ブローホール・未溶融なし | 適正な溶接速度で欠陥防止 | 
| 作業態度 | 安全具着用、手順遵守 | 作業開始前に器具点検を徹底 | 
4. 合格への近道まとめ
- 学科はテキスト復習+過去問題演習で正答率アップ
 - 実技は反復練習が合格の鍵。姿勢とトーチ操作を安定させる
 - 特別ボイラー溶接士は管溶接に特化した練習を徹底
 - 模擬試験で本番を想定し、時間内に完了する練習が重要
 
取得後に出来ること
ボイラーおよび第一種圧力容器の溶接作業に従事できるようになります。労働安全衛生法により、これらの溶接には有資格者の従事が義務付けられているため、資格取得後は溶接現場で重要な役割を担えます。
資格は普通ボイラー溶接士と特別ボイラー溶接士の2区分があり、それぞれ取り扱える溶接対象と業務範囲が異なります。
1. ボイラー溶接士としてできること
(1)溶接作業の実施
- 普通ボイラー溶接士
- ボイラー本体や第一種圧力容器の板溶接作業
 - 機器外装や内部構造部分の接合
 
 - 特別ボイラー溶接士
- ボイラーおよび圧力容器の管溶接作業
 - 高圧配管や熱交換器の接続溶接
 
 
(2)保守・メンテナンス作業
- ボイラーや圧力容器の定期点検時の補修作業
 - 破損部位の溶接修理および強度補強
 - 使用中設備の緊急溶接対応
 
(3)作業指導・現場監督
- 新人溶接作業員への技術指導
 - 溶接品質管理および作業工程の監督
 - 安全作業手順の教育と指導
 
(4)品質管理業務
- 溶接部位の外観検査・非破壊検査への対応
 - 溶接施工記録の作成と品質報告書の提出
 - 不具合発生時の原因調査および改善提案
 
2. 区分別にできること
| 資格区分 | 取り扱える溶接対象 | 主な業務内容 | 
|---|---|---|
| 特別ボイラー溶接士 | 管溶接(ボイラー配管、圧力容器接続部) | 高難度の管溶接作業、配管接続、現場監督 | 
| 普通ボイラー溶接士 | 板溶接(ボイラー本体、圧力容器外装) | 板材接合、補修溶接、保守作業 | 
3. 活躍できる職場・業界
| 業界 | 主な業務内容 | 
|---|---|
| 造船業 | 船体構造部や内部配管の溶接・修理作業 | 
| 建設業 | ボイラー設置、配管接続および溶接補強 | 
| 発電所 | ボイラー・圧力容器の溶接およびメンテナンス | 
| 石油・化学プラント | 高圧配管溶接、耐圧機器接合作業 | 
| 製造業(機械・設備) | 工場内ボイラーの製造・修理溶接 | 
| 設備メンテナンス企業 | 保守点検時の溶接補修や改修作業 | 
4. 資格取得後のメリット
- 専門性の高い業務に従事可能
- 高度な溶接技術を活かし、重要な現場作業を担当
 
 - キャリアアップや昇進に有利
- 現場監督や溶接責任者にステップアップ可能
 
 - 年収アップの可能性
- 資格手当や現場手当が支給されることがある
 
 - 転職・就職での強みになる
- 需要が高く、幅広い業界で活躍の場が広がる
 
 - スキル向上で長期的なキャリア形成
- 難易度の高い案件を担当し、技術者として成長可能
 
 
5. 取得後のキャリアパス
ステップ1: 普通ボイラー溶接士 → 特別ボイラー溶接士
板溶接の経験を積み、管溶接にステップアップ。
ステップ2: 溶接士 → 現場監督・溶接管理者
作業現場での指導や溶接品質の管理を担当。
ステップ3: 関連資格取得でさらに活躍
- 溶接管理技術者(WES)
 - 高圧ガス製造保安責任者
 - 非破壊検査技術者
これらを取得することで、より上位の管理職や専門職に就くことが可能です。 
6. 取得後に求められる心構え
- 安全第一の作業意識を徹底
- 安全規則を守り、事故防止に努める
 
 - 溶接品質の向上を目指す
- 常に最新の技術や施工方法を学習
 
 - 現場でのコミュニケーション強化
- 作業員や関係者との連携を大切にする
 
 
工業系資格一覧
技術士
ガス溶接技能者
公害防止管理者
ボイラー技士
ボイラー整備士
ボイラー溶接士
ガス溶接作業主任者
ボイラー取扱技能講習
溶接作業指導者
溶接管理技術者
アルミニウム溶接技能者評価試験
			
			
	