税関に対して輸出入手続きの申告・申請を行う貿易実務の専門家であり、通関業務を適正かつ迅速に行うために必要な国家資格です。
主な役割と業務内容
- 通関書類の作成・審査: 輸出入に必要な申告書類の作成やチェック。
- 税関への申告代理: 関税法や関連法令に基づく申告手続き。
- 関税・消費税の計算と納付手続き: 関税評価や税額計算の実施。
- 関税法違反防止: 輸出入品の規制遵守確認。
- 貨物検査立ち会い: 税関検査時に輸出入業者をサポート。
必要性と業界での位置付け
- 通関業を営むには、営業所ごとに最低1名の通関士配置が義務付けられている(関税法第19条の2)。
- 貿易企業、物流会社、通関業者からの需要が高く、国際物流を支える重要な役割を担います。
■主催
財務省関税局
受験資格と難易度
1. 受験資格
通関士試験は、誰でも受験可能で、特別な資格や経験は必要ありません。
- 年齢制限: なし
- 学歴制限: なし
- 実務経験: 不要
ポイント
- 高校生から社会人まで幅広い層が受験しています。
- 貿易実務未経験者でも、正しい学習方法を取れば十分合格を目指せます。
2. 試験の難易度
2.1. 合格率
通関士試験は、合格率約10〜15% の難関試験です。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 
| 2022年 | 約14,000人 | 約1,800人 | 約13% | 
| 2023年 | 約13,000人 | 約1,700人 | 約13% | 
| 2024年 | 約12,500人 | 約1,600人 | 約12.8% | 
合格率の特徴
- 3科目すべてで6割以上の得点が必要。
- 通関実務の記述問題が最大の難関とされます。
- 一発合格率は低めですが、計画的な学習で十分突破可能。
2.2. 必要な勉強時間
| 学習者の背景 | 必要勉強時間 | 学習期間の目安 | 
| 法律・貿易未経験者 | 500〜600時間 | 6〜12か月 | 
| 実務経験者(貿易・通関業務従事者) | 300〜400時間 | 3〜6か月 | 
| 他の法律資格保有者 | 250〜350時間 | 3〜5か月 | 
勉強時間のポイント
- 未経験者の場合: 貿易用語や関税法の基礎から学習が必要。
- 経験者の場合: 実務知識を活かし、関税法・通関業法の条文暗記に集中することで短期合格が可能。
2.3. 試験内容別の難易度
| 科目名 | 特徴 | 難易度 | 
| 通関業法 | 法律の条文問題中心。暗記重視。 | ★★★☆☆ | 
| 関税法及び関税定率法等 | 計算問題・条文問題の両方が出題。 | ★★★★☆ | 
| 通関実務 | 記述式で申告書作成が課題。実務経験がないと難しい。 | ★★★★★ | 
2.4. 合格へのハードル
- 全科目で60%以上の得点が必要(足切りあり)。
- 記述式問題の正確さが合否を分けるポイント。
- 過去問演習の徹底が必須で、知識の定着には反復学習が重要。
試験内容
通関業法、関税法及び関税定率法等、通関実務の3科目で構成され、筆記試験のみで実施されます。各科目で60%以上の得点が合格基準で、すべての科目で基準を満たす必要があります。
以下に、各科目の詳細内容、出題形式、難易度、対策方法を解説します。
1. 試験概要
| 項目 | 内容 | 
| 試験形式 | 筆記試験(択一式+記述式) | 
| 試験時間 | 合計約3時間(途中休憩あり) | 
| 合格基準 | 各科目60%以上の得点 | 
| 問題数 | 合計約50〜60問 | 
| 難易度 | ★★★★☆(総合的に高難度) | 
2. 科目別試験内容と対策
2.1. 通関業法
試験の特徴
- 出題数: 約15問(全て択一式)
- 主な内容:
- 通関業者の義務・責任
- 通関士の職務範囲
- 税関との関係や罰則規定
 
頻出テーマ
| 項目 | 内容 | 
| 通関業者の登録 | 登録の要件・手続き、取り消し事由 | 
| 通関士の職責 | 業務内容、業務上の注意義務 | 
| 罰則規定 | 違反時の罰金や業務停止要件 | 
| 税関手続き | 許可・届出、書類提出期限 | 
2.2. 関税法及び関税定率法等
試験の特徴
- 出題数: 約20問(択一式+計算問題)
- 主な内容:
- 関税評価の方法
- 関税率表の適用方法
- 関税減免税制度
- 関税納付と不服申立ての手続き
 
頻出テーマ
| 項目 | 内容 | 
| 関税評価 | CIF価格の計算、間接費用の加算・減算 | 
| 関税率の適用 | 最恵国税率・特恵税率の判定基準 | 
| 減免税制度 | 一定条件下での関税減免手続き | 
| 不服申立て | 税関の処分に対する異議申立て手順 | 
2.3. 通関実務
試験の特徴
- 出題数: 約20問(択一式+記述式)
- 主な内容:
- HSコード(貨物分類)適用
- 輸出入申告書の作成
- 関税率表の読み方
- 実際の貿易書類(インボイス、パッキングリスト)の読み取り
 
頻出テーマ
| 項目 | 内容 | 
| HSコード分類 | 輸出入貨物の適切な分類と税率確認 | 
| 輸出入申告書作成 | 記述式での実際の申告書作成問題 | 
| 許可・不許可判定 | 特定輸出入規制に基づく判定問題 | 
| 関税計算 | 税額計算問題と関連書類確認問題 | 
3. 出題傾向とポイント
頻出テーマ別出題率
| 項目 | 出題率 | 備考 | 
| 関税評価計算 | 約30% | ミスが多い計算問題が合否を左右 | 
| HSコード分類 | 約20% | 正確な読み取りが必要 | 
| 通関業法の罰則規定 | 約15% | 条文暗記で得点源に | 
| 減免税・不服申立て | 約10% | 特有の手続き問題 | 
4. 試験時間と問題構成(イメージ)
| 試験時間 | 科目 | 問題数 | 問題形式 | 
| 10:00〜11:00 | 通関業法 | 約15問 | 択一式 | 
| 11:15〜12:15 | 関税法及び関税定率法等 | 約20問 | 択一式+計算問題 | 
| 13:15〜14:45 | 通関実務 | 約20問 | 択一式+記述式 | 
試験対策
1. 科目別試験対策法
通関業法対策
出題傾向と特徴
- 通関業務の法的基盤が中心。
- 罰則規定・手続き関連条文が頻出。
- 15問中10問以上の正解を目指す。
勉強法とポイント
- 条文暗記が最優先
- 重要条文(通関業者の義務、通関士の職務範囲)をまとめた暗記ノート作成。
 
- 罰則規定を重点的に学習
- 過去問演習で実戦力向上
- 間違えた問題を集中的に復習
関税法及び関税定率法等対策
出題傾向と特徴
- 関税評価計算問題が約30%を占め、正確な計算力が必須。
- 輸出入規制や関税率適用問題も頻出。
勉強法とポイント
- 計算問題特訓(毎日30分)
- 関税評価計算問題を毎日解き、計算スピード向上。
- CIF価格計算や運賃・保険料の加算を重点的に練習。
 
- 税率適用問題の練習
- 規制関連問題の頻出テーマ暗記
- 模擬問題で得点力向上
通関実務対策(最難関科目)
出題傾向と特徴
- 記述式問題での申告書作成が最大の難関。
- HSコード分類や書類読解問題も頻出。
勉強法とポイント
- HSコード分類練習(週3回以上)
- 申告書作成問題の繰り返し練習
- インボイス・パッキングリストを基に模擬申告書作成。
- 書類作成のスピードと正確さを養う。
 
- 過去問10年分の完全制覇
- 模試で実戦力強化
2. 勉強方法の選択肢
独学での対策
- 費用を抑えられるが、自己管理能力が必須。
- おすすめ教材:
- 『通関士教科書(各科目別)』
- 『通関士過去問題集(10年分)』
- 『記述式問題完全対策集』
 
通信講座・予備校活用
- 効率的に学びたい場合におすすめ。
- 模試やオンライン講座で実力測定が可能。
- おすすめ予備校:
3. 効率的な勉強法のポイント
- インプットとアウトプットのバランス重視
- 週1回の復習日を設ける
- スキマ時間は暗記カードで活用
- 模試は2回以上受験
4. 模試・実戦練習の活用方法
| 時期 | 内容 | ポイント | 
| 試験2か月前 | 模試受験(1回目) | 弱点発見と補強対象を把握 | 
| 試験1か月前 | 模試受験(2回目) | 合格ライン超えを確認 | 
| 試験2週間前 | 実戦形式の総仕上げ | 制限時間内での完成度確認 | 
取得後に出来ること
1. 通関士ができる主な業務
1.1. 税関への申告代理
通関士は、税関に対して次のような申告手続きを代理できます。
- 輸出入申告書の作成・提出
- 関税・消費税の計算および納付代行
- 輸出入許可申請および関連手続き
- 原産地証明や特恵税率適用申請
1.2. 輸出入関連書類の作成・審査
通関士は、輸出入業務に必要な各種書類を作成・確認します。
- インボイス(商業送り状)
- パッキングリスト(梱包明細書)
- 貨物保険証券
- 原産地証明書
- 船荷証券(B/L)
1.3. 税関検査対応・立会い
- 税関による貨物検査が実施される際に立ち会い、適切な対応を行います。
- 検査の結果に基づいて修正申告や追加書類提出が必要な場合も通関士がサポートします。
1.4. 関税に関するコンサルティング業務
- 関税率の調査や税負担軽減策の提案。
- 関税評価や関税の減免・特恵税率適用に関するアドバイス。
- 不服申立てや関税訴訟に関する支援。
1.5. 輸出入規制の確認・遵守支援
- 輸出貿易管理令や輸入貿易管理令に基づく許可・承認手続き支援。
- 輸出入禁止品や規制対象品目の確認。
2. 資格取得後のキャリアパス
2.1. 通関業者での勤務
- フォワーダー(国際貨物代理店)や専門通関業者での通関手続き業務。
- 税関対応や顧客企業への通関に関するサポート。
2.2. 物流会社・商社・メーカーの貿易部門での活躍
- 社内通関業務や輸出入書類管理。
- 関税評価や貿易実務全般の担当者として従事。
2.3. 独立開業・フリーランス
- 豊富な実務経験と人脈を活かして、独立して顧客企業の通関手続き支援。
- 貿易コンサルタントとして企業向けにアドバイス提供。
2.4. 税関・関連行政機関での勤務
- 税関職員として通関審査や監督業務に従事。
- 国家公務員として安定したキャリアパスも視野に入ります。
3. 通関士の年収とキャリアアップの可能性
3.1. 年収の目安
| 経験年数 | 年収目安 | 備考 | 
| 初任給(通関士補助) | 300〜400万円 | 資格取得直後、実務経験を積む段階。 | 
| 3〜5年目 | 400〜600万円 | 一人で通関業務を担当できるレベル。 | 
| 10年目以上 | 600〜800万円 | 管理職や責任者クラス。 | 
| 独立開業 | 600〜1,200万円以上 | 実力・顧客数次第で高収入も可能。 | 
4. 通関士資格の取得メリット
| メリット | 内容 | 
| 安定した需要 | 国際貿易が続く限り、通関士は不可欠。 | 
| キャリアアップに直結 | 物流・商社業界での昇進に有利。 | 
| グローバルに活躍 | 海外とのやり取りが多く国際感覚が身につく。 | 
| 独立・フリーランスが可能 | 高収入を目指すことも可能。 | 
| 社会的信頼の向上 | 国家資格取得で専門性が証明される。 | 
5. 今後の需要と将来性
- 国際物流の拡大: Eコマースやサプライチェーンのグローバル化に伴い、輸出入量が増加中。
- 法改正への対応: 通関手続きの電子化・自動化が進んでおり、最新の知識を持つ通関士が求められる。
- 貿易摩擦や関税問題への対応: 政策変動時には、関税評価や規制確認で通関士の役割がさらに重要に。
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