日本溶接協会(JWES)が認定する資格で、溶接作業の管理・品質保証・技術指導 を行う技術者向けの資格です。
この資格を取得することで、工場・建設現場・造船・自動車・航空機産業など で、溶接工程の管理者として活躍できるようになります。
資格の種類とレベル
WES 8103 溶接管理技術者資格は、レベルごとに分類されています。
資格レベル | 役割・業務範囲 | 主な対象者 |
---|---|---|
1級(上級) | 溶接管理の統括責任者(品質管理・技術指導) | 溶接設計者、工場管理者 |
2級(中級) | 溶接工程の管理・指導者 | 工場の溶接管理者、施工管理者 |
3級(初級) | 溶接作業の基本管理(現場リーダー向け) | 現場監督、職長クラス |
- 1級は、企業の溶接部門を統括する管理職向け。
- 2級は、工場や現場で溶接管理を担当する技術者向け。
- 3級は、溶接作業の現場監督やチームリーダー向け。
■主催
(社)日本溶接協会
目次
受験資格と難易度
受験資格
資格レベル | 受験資格 |
---|---|
1級 | 2級取得後、3年以上の実務経験 or 溶接関連の実務経験10年以上 |
2級 | 3級取得後、2年以上の実務経験 or 溶接関連の実務経験5年以上 |
3級 | 実務経験1年以上 or 溶接技能者資格(JIS Z 3811)取得者 |
実務経験がない場合でも、JIS溶接技能者資格があれば3級から受験可能。
合格率と難易度
資格レベル | 合格率 | 難易度 |
---|---|---|
1級 | 約40% | 非常に難しい(高度な管理能力が必要) |
2級 | 約50% | 難しい(実務経験が重要) |
3級 | 約70% | 比較的易しい(基礎知識があれば合格可能) |
- 1級は高度な知識が求められ、合格率は低め。
- 2級は実務経験が重要で、実技試験の対策が必要。
- 3級は基礎レベルの問題が多く、対策をしっかりすれば合格しやすい。
試験内容
試験は 学科試験 と 実技試験(2級以上) で構成されています。
学科試験
試験は、筆記試験(選択・記述式)で行われます。
試験科目 | 主な内容 |
---|---|
溶接法・溶接材料 | 各種溶接法(TIG、MIG、アーク溶接など)の原理と適用材料 |
溶接施工管理 | 工場や現場での溶接工程の管理方法 |
溶接欠陥と品質管理 | 欠陥の種類(ブローホール、クラック、溶け込み不足)と対策 |
安全管理 | 労働安全衛生法、溶接作業のリスク管理 |
JIS・ISO規格 | JIS Z 3811、ISO 9606などの国際規格の理解 |
1級は、より高度な品質保証・技術指導の知識が求められる。
実技試験(2級・1級のみ)
- 溶接部の検査(非破壊検査・曲げ試験・X線透過試験)
- 品質管理の実務(試験片の評価、溶接工程の改善提案)
3級は実技試験なし。2級・1級は溶接品質管理の実務試験あり。
試験対策
学科試験の対策
学科試験は 筆記試験(選択・記述式) で、溶接に関する知識が問われます。試験範囲が広いため、以下のように分野ごとに対策を進めると効率的です。
(1) 試験範囲の把握
学科試験は、以下の主要5分野から出題されます。
分野 | 出題内容 |
---|---|
溶接法・材料 | 各種溶接法(TIG・MIG・アーク)、母材・溶加材の特性 |
溶接施工管理 | 溶接工程の計画、品質管理、施工の流れ |
溶接欠陥と品質管理 | 溶接部の欠陥(割れ・ピット・ブローホール)と対策 |
安全管理 | 労働安全衛生法、保護具、火災・感電対策 |
JIS・ISO規格 | JIS Z 3811(アルミ溶接)、ISO 9606(国際資格) |
(2) 効果的な学習方法
公式テキストの活用
- 日本溶接協会(JWES)発行の公式テキストを活用
- JIS Z 3811 や ISO 9606 などの関連規格を確認
- 施工管理に関する専門書も参考にする
過去問を繰り返し解く
- 試験機関が公開している過去問題を入手
- 間違えた問題は解説を読んで理解
- 頻出問題を重点的に学習
オンライン講習・セミナーを活用
- 日本溶接協会(JWES)や各職業訓練校が開催する 試験対策講習会 に参加
- eラーニングやYouTubeの専門チャンネルで溶接管理の基礎を学ぶ
ノートを作成して要点をまとめる
- 重要な数値や公式をメモ
- 図解を活用し、溶接欠陥や管理方法を視覚的に整理
実技試験の対策(2級・1級のみ)
2級・1級の試験では実技試験が課されるため、事前練習が不可欠です。
(1) 実技試験の評価ポイント
溶接部の検査
- 溶接ビードの 外観検査
- 非破壊検査(UT・RT・PT) の評価
- 曲げ試験・引張試験 の実施
溶接施工管理の実務
- 適切な溶接条件の設定
- 溶接計画書の作成
- 作業員への指示と溶接品質管理
(2) 事前練習のポイント
試験で使用される溶接手法の練習
- TIG・MIG・アーク溶接の実践
- 鉄・アルミ・ステンレスなど、試験対象の金属を使用
- 正しい電流・電圧設定を把握
検査方法の習得
- 超音波探傷試験(UT) や X線透過試験(RT) の評価方法を理解
- 溶接ビードの外観評価の基準を学習
- 溶接欠陥の発生原因と防止策を実践
試験形式に慣れる
- 模擬試験を実施し、 制限時間内に作業を終える練習
- 溶接技術センターや職業訓練校の実技講習を受講
試験本番での注意点
時間配分を意識
- 学科試験は時間内に全問解答するため、時間管理を徹底
- 実技試験では、焦らず確実に作業を進める
試験官の指示を確認
- 実技試験では 作業前に試験官の説明をしっかり聞く
- 指示を間違えないよう、 確認しながら作業を進める
機器・工具の準備
- 溶接機の 電流・電圧設定 を正確に行う
- 試験場での工具の配置を確認し、 スムーズに作業できるよう準備
取得後に出来ること
取得すると、溶接工程の管理や品質保証、指導・教育など、幅広い業務を担当できるようになります。資格のレベル(1級・2級・3級)に応じて、担当できる業務の範囲も異なります。
1. 溶接管理者としての業務
溶接管理技術者資格を持つことで、工場や建設現場での 溶接管理業務 を担当できます。
業務内容 | 具体的な役割 |
---|---|
溶接作業の計画・管理 | 溶接手順書(WPS)の作成、作業員の割り当て |
品質管理(QC) | 溶接部の欠陥検査、非破壊検査(UT・RT・PT) |
安全管理 | 溶接作業のリスク管理(感電・火災・有害ガス対策) |
溶接条件の最適化 | 電流・電圧設定、シールドガス調整、溶接速度の管理 |
溶接記録の作成 | JIS規格やISO規格に基づいた溶接品質の証明書作成 |
➡ 1級取得者は、複数の現場や工場を統括する管理職としての業務も可能。
➡ 2級は現場での溶接工程管理、3級は作業リーダーとしての役割が期待される。
2. 指導者・教育者としての活動
資格を取得すると、溶接技術の 教育・指導 に携わることができます。
- 若手技術者の育成
- 工場や現場での 新人技術者の指導
- OJT(On-the-Job Training) を通じた溶接技術の伝承
- 職業訓練校や専門学校での講師
- JIS溶接技能者評価試験 の指導
- 学生や若手技術者向けの溶接技術講習の実施
- 溶接資格取得支援
- 社内での 溶接資格取得プログラムの運営
- 社内試験官として、技能試験の監督・指導を担当
➡ 1級取得者は、企業内の研修プログラムを担当する講師として活躍できる。
➡ 2級は現場のリーダーとして指導役を担うことが多い。
3. 昇進・キャリアアップ
溶接管理技術者資格を持つことで、 管理職・監督者への昇進 や 専門職へのキャリアアップ が可能になります。
キャリアパス | 主な業務内容 |
---|---|
製造部門の管理職 | 工場長・製造部長としての工程管理 |
品質管理責任者(QC) | 溶接品質の保証、検査方法の改善 |
施工管理技士(建設業) | 建築現場での溶接工程管理、工事監督 |
非破壊検査技術者(NDT) | X線検査(RT)、超音波検査(UT)の実施 |
➡ 特に1級取得者は、企業の溶接管理部門や品質保証部門での昇進に有利。
➡ 2級取得者は、現場監督や品質管理者としてのポジションが期待される。
4. 独立・フリーランスの可能性
溶接管理技術者資格を活かして、 フリーランスや独立開業 も可能です。
- フリーランスの溶接管理者
- 建設現場や工場と契約し、溶接管理業務を請け負う
- 品質管理コンサルタント として、企業向けの品質向上支援
- 溶接技術コンサルタント
- 新しい溶接技術の導入支援
- 生産ラインの最適化アドバイス
- 自営業(溶接工場の経営)
- アルミ・ステンレスの溶接加工工場の開業
- 特注部品の製造・販売(自動車・バイク・建築資材)
➡ 1級取得者は、独立して溶接技術のコンサルティング業務を行うことも可能。
➡ 2級・3級取得者でも、経験を積めばフリーランスの管理者として働く道がある。
5. 他の上位資格へのステップアップ
溶接管理技術者資格を取得すると、さらに 高度な資格取得 の道が開かれます。
(1) 国際溶接技術者資格(IWE・IWT)
- IWE(International Welding Engineer):国際溶接技術者
- IWT(International Welding Technologist):国際溶接技術士
- 国際的に認められた資格で、海外プロジェクトにも関われる
(2) 非破壊検査技術者(NDT資格)
- 超音波探傷試験(UT)
- X線透過試験(RT)
- 磁粉探傷試験(MT)
- 溶接品質管理の分野で必要とされる資格で、専門職としてのキャリアアップが可能
(3) 施工管理技士(建設業)
- 建築・土木分野の国家資格
- 溶接施工管理の仕事と連携し、現場監督としての役割を担うことができる
➡ 1級取得者は、IWE・IWTなどの国際資格に挑戦するのがおすすめ。
➡ 2級・3級取得者は、非破壊検査技術者や施工管理技士の資格取得がキャリアアップに有効。
工業系資格一覧
技術士
ガス溶接技能者
公害防止管理者
ボイラー技士
ボイラー整備士
ボイラー溶接士
ガス溶接作業主任者
ボイラー取扱技能講習
溶接作業指導者
溶接管理技術者
アルミニウム溶接技能者評価試験