一般用医薬品(市販薬)の販売・相談を行うための資格です。
- 第2類・第3類医薬品の販売が可能(風邪薬、鎮痛剤、胃薬、整腸剤など)
- 薬剤師がいないドラッグストアやコンビニなどでも医薬品販売を行える
- 国家資格ではなく、各都道府県が実施する公的資格
■主催
厚生労働省
目次
受験資格と難易度
1. 受験資格
登録販売者試験は、誰でも受験可能な公的資格です。
- 学歴・年齢・実務経験などの制限なし
- 未経験者・無資格者でも受験可能
- 全国47都道府県で毎年実施(都道府県ごとに出題傾向が異なる)
ポイント
- 受験資格のハードルが低いため、未経験者でも挑戦しやすい
- 試験は都道府県単位で実施されるが、合格すれば全国どこでも働ける
2. 難易度(合格率・試験内容)
合格率の推移(過去5年)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年 | 約50,000人 | 約22,000人 | 約44% |
2022年 | 約48,000人 | 約21,000人 | 約44% |
2021年 | 約47,500人 | 約20,500人 | 約43% |
2020年 | 約46,000人 | 約19,800人 | 約43% |
2019年 | 約45,500人 | 約19,500人 | 約43% |
ポイント
- 合格率は40〜45%程度で、比較的難易度が高め
- 独学でも合格可能だが、しっかりとした対策が必要
- 市販のテキスト・オンライン講座・過去問演習を活用すると合格しやすい
試験内容
1. 試験概要
- 試験形式:マークシート方式(五肢択一)
- 試験時間:120〜150分(都道府県によって異なる)
- 問題数:120問
- 合格基準:総得点の70%以上、かつ各科目40%以上(足切りあり)
- 実施回数:年1回(都道府県によっては複数回実施)
2. 試験科目と詳しい出題内容
登録販売者試験は、5つの科目(全120問)から出題されます。
科目 | 出題内容 | 問題数 | 配点 |
---|---|---|---|
① 医薬品に共通する特性と基本的な知識 | 副作用、相互作用、薬の体内動態、リスク分類 | 20問 | 40点 |
② 人体の構造と働き | 内臓・神経・ホルモンの役割、消化・循環・呼吸・排泄機能 | 8問 | 20点 |
③ 主な医薬品とその作用 | 風邪薬、鎮痛剤、胃腸薬、アレルギー薬、漢方薬 | 40問 | 80点 |
④ 薬事関係法規・制度 | 医薬品医療機器等法、販売ルール、管理者の責務 | 20問 | 40点 |
⑤ 医薬品の適正使用と安全対策 | 副作用の報告義務、医薬品の適正使用、リスク管理 | 12問 | 20点 |
3. 科目別の詳細な出題内容とポイント
① 医薬品に共通する特性と基本的な知識(20問・40点)
この分野では、薬が体内でどのように吸収・代謝・排泄されるか、副作用や相互作用について問われます。
項目 | 内容 |
---|---|
医薬品の基本概念 | 一般用医薬品と医療用医薬品の違い、薬の分類 |
薬の吸収・代謝・排泄 | 経口薬・外用薬・注射薬の特徴と作用時間 |
副作用と相互作用 | 重大な副作用(アナフィラキシー、肝障害など) |
医薬品のリスク分類 | 第1類・第2類・第3類医薬品の違い |
② 人体の構造と働き(8問・20点)
人体の各器官の働きや、生理機能についての問題が出題されます。
項目 | 内容 |
---|---|
消化器系 | 胃・腸・肝臓・膵臓の働き、消化酵素の種類 |
循環器系 | 心臓の構造、血圧の調節 |
呼吸器系 | 肺・気管の働き、酸素の運搬 |
神経系 | 自律神経(交感神経・副交感神経)、ホルモン |
③ 主な医薬品とその作用(40問・80点)
登録販売者試験の最重要分野で、各種医薬品の成分・作用・副作用を問う問題が多く出題されます。
医薬品分類 | 主な薬の成分・作用 |
---|---|
風邪薬 | 解熱鎮痛成分(アセトアミノフェン)、抗ヒスタミン成分 |
鎮痛剤 | NSAIDs(イブプロフェン・ロキソプロフェン)、アセトアミノフェン |
胃腸薬 | 制酸剤、消化酵素、H2ブロッカー |
アレルギー薬 | 抗ヒスタミン薬、点鼻薬、目薬 |
漢方薬 | 葛根湯、小青竜湯、防風通聖散など |
④ 薬事関係法規・制度(20問・40点)
医薬品の販売ルールや、登録販売者の責務について問われます。
項目 | 内容 |
---|---|
医薬品医療機器等法 | 医薬品の分類・販売規制 |
販売方法・情報提供 | 対面販売、インターネット販売のルール |
管理者の責務 | 登録販売者の義務、店舗管理 |
⑤ 医薬品の適正使用と安全対策(12問・20点)
医薬品のリスク管理や、安全な使用方法について問われます。
項目 | 内容 |
---|---|
副作用の報告 | 医薬品副作用被害救済制度、リスク評価 |
医薬品の適正使用 | 服薬指導、アレルギーの注意点 |
試験対策
1. 科目別の勉強法と対策
① 医薬品に共通する特性と基本的な知識(副作用・相互作用)
勉強法
- 薬の吸収・代謝・排泄の流れを図にまとめる
- 副作用・相互作用のパターンを覚える(特にNSAIDsや抗ヒスタミン薬)
- 過去問で繰り返し出題される副作用・リスクを重点的に学習
重点対策
- 「重大な副作用(アナフィラキシー、肝障害、腎障害)」は必ず覚える
- 薬の相互作用(アルコールとの併用不可の薬など)を整理する
② 人体の構造と働き(生理学・解剖学)
勉強法
- 消化器・循環器・神経系の機能を重点的に学習(出題率が高い)
- 単なる暗記ではなく、「なぜそうなるのか」を理解する
- 図やイラストを使って、臓器ごとの役割を整理する
重点対策
- 消化酵素(ペプシン・アミラーゼ・リパーゼなど)とその働きを覚える
- 自律神経の働き(交感神経と副交感神経)を整理
③ 主な医薬品とその作用(最重要科目・40問)
勉強法
- 「薬の分類 → 代表的な成分 → 作用・副作用」を一覧表にする
- 語呂合わせやイラストを活用して暗記
- 「効果が似ているが成分が違う薬」を整理し、比較して覚える
重点対策
- 「風邪薬」「鎮痛剤」「胃腸薬」「漢方薬」の分類と代表成分を暗記
- 「NSAIDs(イブプロフェン・ロキソプロフェン)とアセトアミノフェンの違い」を整理
- 「抗ヒスタミン薬(アレルギー薬)」の種類と副作用(眠気など)を確認
④ 薬事関係法規・制度(暗記で得点源)
勉強法
- テキストの該当ページを何度も繰り返し読む(丸暗記が有効)
- 過去問の出題傾向を分析し、よく出る条文を重点的に学習
- 一問一答形式の問題集で短時間で繰り返しチェック
重点対策
- 「登録販売者の職務・義務」「販売ルール」は必ず暗記
- 「医薬品の分類(第1類・第2類・第3類)」の違いを整理
⑤ 医薬品の適正使用と安全対策(副作用・服薬指導)
勉強法
- 「副作用の報告義務」「医薬品副作用被害救済制度」の仕組みを覚える
- 過去問の「服薬指導」の問題を繰り返し解く
重点対策
- 「アナフィラキシーの症状」「救済制度の対象外のケース」を整理
- 「服薬指導時の注意点(食後・空腹時服用など)」を覚える
2. 過去問と模擬試験の活用方法
過去問は10年分を最低3回解く
- 過去問演習を繰り返すことで、出題傾向を把握
- 間違えた問題をノートにまとめて、復習に活用
模擬試験で時間配分を確認
- 本番と同じ時間で解き、時間管理を練習
- 最低でも2回は模試を受ける
間違えた問題を徹底復習
- 「なぜ間違えたのか」を分析し、知識の定着を図る
取得後に出来ること
1. 登録販売者の主な業務
登録販売者は、薬剤師の代わりに一般用医薬品(第2類・第3類)の販売・相談を行う仕事です。
① 一般用医薬品(OTC医薬品)の販売・接客
- 第2類・第3類医薬品の販売が可能(風邪薬・鎮痛剤・胃薬・整腸剤・ビタミン剤など)
- お客様の症状を聞き、適切な医薬品を提案する
- 副作用や使用上の注意を説明し、安全な服用をサポート
② 医薬品の管理・在庫チェック
- 使用期限や在庫を管理し、適切な陳列を行う
- 誤った取り扱いがないかチェックし、医薬品の品質を維持
③ 店舗運営・売上管理(ドラッグストア勤務の場合)
- レジ業務、売上管理、シフト調整など店舗運営に関わる業務
- 化粧品や健康食品などの販売促進も担当することが多い
2. 登録販売者として働ける場所(就職先)
① ドラッグストア(薬局・調剤薬局)
- 最も一般的な勤務先
- 医薬品の販売・接客・在庫管理・店舗運営
- 大手ドラッグストア(マツモトキヨシ、スギ薬局、ウエルシアなど)は登録販売者を積極採用
メリット
- 求人数が多く、未経験でも就職しやすい
- キャリアアップしやすく、店長やエリアマネージャーを目指せる
② コンビニ・スーパー
- 登録販売者がいれば、コンビニやスーパーでも医薬品を販売可能
- 食品や日用品と一緒に医薬品を購入できる利便性があるため、需要が拡大
メリット
- ドラッグストアよりも夜勤・深夜勤務が少ない(店舗による)
- 地域密着型の店舗で働ける
③ ホームセンター・ディスカウントストア
- 大型店舗で医薬品コーナーを担当
- 日用品・健康食品の販売も行う
メリット
- ドラッグストアと比べて医薬品販売の業務負担が軽い
- 医薬品以外の知識も身につくため、接客スキルが向上
④ 医薬品メーカー・卸売業
- 製薬会社や医薬品卸売会社で営業・管理業務に携わる
- 登録販売者の知識を活かして、新商品開発や販売促進を担当
メリット
- 営業職や開発職としてのキャリアが積める
- 医薬品の最新情報を学べる
⑤ 独立開業(薬局・店舗経営)
- 一定の実務経験(2年以上)を積めば、独立開業も可能
- 個人経営の薬局や医薬品販売店を運営できる
メリット
- 自分のペースで働ける
- 地域に密着した医薬品販売ができる
3. キャリアアップ・年収の目安
① 年収・給与の目安
登録販売者の年収は、勤務先や経験年数によって異なります。
勤務先 | 年収目安 |
---|---|
ドラッグストア(正社員) | 約300万〜450万円 |
ドラッグストア(パート・アルバイト) | 時給1,200円〜1,800円 |
コンビニ・スーパー | 約250万〜350万円 |
医薬品メーカー(営業職) | 約350万〜500万円 |
店長・エリアマネージャー | 約450万〜600万円 |
② キャリアアップの選択肢
キャリアパス | 具体的な仕事内容 |
---|---|
店長・エリアマネージャー | ドラッグストアの管理・運営、スタッフ育成 |
医薬品メーカーの営業職 | 医薬品の販売促進、取引先(薬局・病院)との交渉 |
医薬品登録販売者の講師 | 専門学校や資格スクールで講師として指導 |
独立開業(個人薬局・店舗経営) | 医薬品販売の店舗を経営 |
4. 取得後のメリットと今後の需要
① 資格があれば未経験でも医薬品業界に就職できる
- 薬剤師資格がなくても医薬品販売に関われる
- ドラッグストアやコンビニなど、幅広い業種で働ける
② 需要が高く、将来的にも安定
- 超高齢社会の影響で、セルフメディケーション(自己治療)の需要が増加
- 薬剤師不足を補うため、登録販売者の役割が拡大
③ ワークライフバランスが取りやすい
- パート・アルバイトでも資格を活かして高時給で働ける
- 勤務時間の選択肢が多く、ライフスタイルに合わせた働き方ができる