精神的な障害を抱える人々が社会で自立し、生活しやすくなるように支援する国家資格の専門職で医療機関や福祉施設、行政機関などで、相談援助や社会復帰のサポートを行います。
【主な業務内容】
精神保健福祉士の仕事は大きく分けて以下のようなものがあります。
-
相談援助
- 精神疾患を持つ人やその家族からの相談を受け、適切な支援方法を提案。
- 生活上の困りごと(就労、住居、経済的支援など)の解決をサポート。
-
医療・福祉サービスの調整
- 医療機関や福祉施設、行政機関と連携し、必要な支援につなげる。
- 退院後の生活支援計画の作成や、地域でのサポートを調整。
-
権利擁護(アドボカシー)
- 精神障害を持つ人が適切な権利を享受できるよう支援。
- 差別や偏見をなくすための啓発活動。
-
就労・社会復帰支援
- 就労支援や生活訓練のサポート。
- 地域での自立生活のための支援(グループホームの紹介など)。
■主催
(財)社会福祉振興・試験センター
(社)日本精神保健福祉士協会
厚生労働省
目次
受験資格と難易度
1. 受験資格
精神保健福祉士の国家試験を受験するには、一定の学歴や実務経験を満たす必要があります。主なルートは以下の3つです。
① 福祉系大学ルート(最短・一般的なルート)
- 福祉系の4年制大学で指定科目を履修 → 卒業後、受験資格取得
- 社会福祉学科などの福祉系学部で、精神保健福祉士の指定科目を履修すれば、卒業と同時に受験資格を得られます。
② 一般大学+養成施設ルート
- 一般大学卒業(福祉系以外) → 1年間の養成施設(夜間も可)を修了 → 受験資格取得
- 福祉系以外の大学を卒業した場合でも、このルートを利用すれば受験資格を得ることができます。
③ 実務経験+養成施設ルート(社会人向け)
- 相談援助業務に3年以上従事 → 養成施設(1年間)を修了 → 受験資格取得
- 例えば、福祉施設や病院で相談援助業務の経験がある人が対象となります。
2. 試験の内容と難易度
試験科目(全12科目)
試験はマークシート方式(五肢択一)で、以下の科目から出題されます。
- 人体の構造と機能及び疾病
- 心理学と心理的支援
- 社会理論と社会システム
- 現代社会と福祉
- 地域福祉の理論と方法
- 福祉行財政と福祉計画
- 社会保障
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 低所得者に対する支援
- 保健医療サービス
- 権利擁護と成年後見制度
- 精神保健福祉の理論と相談援助の展開(専門科目)
試験の合格率と難易度
- 合格率:約60〜65%(例年)
- 令和5年度(第26回):63.3%(受験者7,534名中4,771名合格)
- 令和4年度(第25回):62.3%
- 令和3年度(第24回):62.0%
- 難易度:中程度(しっかり勉強すれば合格可能)
- 福祉系の知識がある人にとっては比較的合格しやすい資格。
- 過去問を中心に学習し、専門知識をしっかり固めることが重要。
- 特に「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」は配点が高いため、重点的に対策が必要。
3. 試験対策のポイント
- 過去問を繰り返し解く(過去5年分を最低3回解くのが理想)
- 苦手分野を重点的に補強(特に法律・制度関連は変更があるため要確認)
- 模擬試験を活用(試験慣れしておくと本番での得点率が上がる)
- 最新の福祉制度・法律をチェック(特に精神保健福祉に関する改正点)
試験内容
1. 試験の構成
試験は以下の2つの科目群で構成されます。
① 共通科目(11科目)
福祉・医療・心理・社会制度に関する幅広い知識が問われます。
科目 | 内容 |
---|---|
1. 人体の構造と機能及び疾病 | 人体の構造、主要な疾患、健康管理についての基礎知識 |
2. 心理学と心理的支援 | 心理学の基礎、カウンセリング技法、ストレス・メンタルヘルス |
3. 社会理論と社会システム | 社会構造、経済・文化の影響、社会問題の分析 |
4. 現代社会と福祉 | 福祉の歴史、社会保障制度、社会福祉の理念 |
5. 地域福祉の理論と方法 | 地域社会における福祉の役割、ボランティア、地域ネットワーク |
6. 福祉行財政と福祉計画 | 福祉政策、行政の役割、財源と制度設計 |
7. 社会保障 | 年金、医療保険、生活保護などの社会保障制度 |
8. 障害者に対する支援と障害者自立支援制度 | 障害者福祉の制度・サービス、就労支援 |
9. 低所得者に対する支援 | 生活困窮者支援、生活保護制度、支援機関の役割 |
10. 保健医療サービス | 医療制度、精神科医療、リハビリテーション |
11. 権利擁護と成年後見制度 | 成年後見制度、虐待防止、利用者の権利保護 |
② 専門科目(1科目)
精神保健福祉士として必要な専門的知識とスキルが問われます。
科目 | 内容 |
---|---|
12. 精神保健福祉の理論と相談援助の展開 | 精神保健福祉士の役割、相談援助技術、精神障害者の支援、事例問題 |
専門科目は配点が高く、重点的に対策することが重要です。
2. 試験問題の特徴
- 五肢択一のマークシート方式(全150問)
- 共通科目:125問
- 専門科目:25問
- 試験時間:午前・午後に分かれた2部構成(計4時間30分)
- 午前:10:00~12:30(150分)
- 午後:14:00~15:30(90分)
- 総合得点の60%以上が合格ライン(例年90点前後)
- ただし、1科目でも極端に低いと不合格になる「足切り基準」があるため、バランスよく得点することが必要
試験対策
① まずは試験範囲を把握する
まず、出題科目(12科目)とそれぞれの重要ポイントを確認しましょう。
特に、「精神保健福祉の理論と相談援助の展開(専門科目)」は配点が高く、重点的に勉強する必要があります。
② 過去問を徹底的に解く(最低5年分)
- 過去問は「最強のテキスト」。問題の出題傾向を知り、選択肢の癖を把握する。
- まずは解答を見ながら1周目を通読(知識の確認)。
- 2周目以降は時間を計って解き、本番の感覚をつかむ。
- 間違えた問題は「なぜ間違えたのか?」を必ず分析し、理解するまで繰り返す。
おすすめの過去問活用法
- 1周目:「どんな問題が出るのかを把握する」
- 2周目:「時間を計りながら解き、正答率を上げる」
- 3周目:「間違えた問題を重点的に復習」
- 試験直前:「苦手分野を最後にもう一度見直す」
③ 法改正・最新情報をチェック
精神保健福祉士試験では、法律・制度の最新改正が出題されることが多いため、最新情報を必ず確認しましょう。
特に重要な法律・制度(直近の改正ポイントを確認)
- 精神保健福祉法(入院制度・地域移行支援)
- 障害者総合支援法(サービス体系、障害者手帳の見直し)
- 成年後見制度(権利擁護、虐待防止)
- 生活保護法(最低生活費の見直し、支援の強化)
対策方法
- 厚生労働省の公式サイトで最新情報をチェック
- 最新の試験対策本を活用(法改正のポイントがまとめられているものを選ぶ)
④ 専門科目(相談援助)の事例問題に慣れる
精神保健福祉士の試験では、相談援助の実践を問う事例問題が出題されます。
これが苦手な人は多いので、早めに対策しておくことが重要です。
事例問題の攻略ポイント
- 支援の基本姿勢を理解する(クライアント中心の支援、尊重と共感)
- クライアントの状況を正しく把握し、適切な対応を選ぶ
- 相談援助のプロセス(アセスメント→計画→支援→評価)を覚える
対策方法
- 過去問の事例問題を重点的に解く
- 事例問題集を活用し、さまざまなケースに触れる
- 現場での実際の対応と結びつけて考える
⑤ 模擬試験を活用し、本番対策をする
本番では時間配分が重要になります。
事前に模擬試験を受けて、本番の感覚をつかんでおきましょう。
模擬試験の活用ポイント
- 本番と同じ時間で解く練習をする(午前・午後の時間割で実施)
- 試験終了後、間違えた問題を復習し、解き直す
- 得点率を分析し、苦手分野を重点的に補強
目標得点率の目安
- 模擬試験で80%以上の得点が取れるようになると、本番で余裕が持てる
取得後に出来ること
1. 主な業務内容
① 相談援助業務
- 精神疾患やメンタルヘルスの問題を抱える人とその家族の相談対応
- 生活上の困難(就労、住居、経済的問題など)の解決支援
- 必要な社会資源(福祉サービス、医療機関、支援団体など)への橋渡し
② 退院支援・地域移行支援
- 精神科病院からの退院を希望する人の生活設計のサポート
- 地域での自立生活を支援するための計画作成
- グループホームや地域活動支援センターへの調整
③ 就労支援
- 精神障害を持つ人の就職・復職支援(ジョブコーチ、職場適応指導)
- 障害者雇用制度を活用した職業紹介
- 就労継続支援事業所(A型・B型)との連携
④ 権利擁護・成年後見制度の支援
- 精神障害者が適切な医療・福祉サービスを受けられるようサポート
- 成年後見制度の利用支援や虐待防止の取り組み
- 精神障害者の差別や偏見をなくすための啓発活動
⑤ 自殺予防・メンタルヘルス支援
- 自殺リスクのある人への支援(相談窓口の対応、傾聴)
- 企業・学校でのメンタルヘルス相談
- 精神疾患の予防・早期発見に向けた啓発活動
2. 活躍できる職場
① 医療機関
- 精神科病院・総合病院の精神科(PSWとして患者支援)
- 心療内科・精神科クリニック(カウンセリングや外来支援)
- デイケア・リハビリテーションセンター(社会復帰支援)
② 福祉施設・支援機関
- 障害者支援施設・グループホーム(生活サポート)
- 地域活動支援センター・就労支援施設(自立支援)
- 自殺防止センター・相談支援センター(メンタルヘルス相談)
③ 行政機関・公的機関
- 市役所・区役所の福祉課(精神障害者の福祉手続き)
- 保健所・精神保健福祉センター(地域精神保健の推進)
- ハローワークの障害者雇用支援担当
④ 教育・企業
- スクールソーシャルワーカー(学校での支援員)
- 企業の人事・労務部門(従業員のメンタルヘルス対策)
- EAP(従業員支援プログラム)のカウンセラー
3. キャリアアップ・専門領域の発展
① 他の資格とのダブルライセンス
精神保健福祉士を取得した後、他の資格と組み合わせることで、より専門的な仕事が可能になります。
- 社会福祉士(ソーシャルワーカーとしての幅を広げる)
- 公認心理師(心理支援の専門性を強化)
- 産業カウンセラー(企業でのメンタルヘルス支援)
② 精神科病院でのキャリアアップ
- 精神科ソーシャルワーカーとして経験を積み、主任PSWや管理職へ
- 精神科医療のコーディネーターとしてチーム医療に参加
③ 研究・教育分野への進出
- 大学や専門学校で精神保健福祉士の養成講師として活動
- 精神保健福祉に関する研究・政策提言に関わる