話す・聞く・食べる ことに関するリハビリテーションを行う専門職でコミュニケーション障害や摂食・嚥下(えんげ)障害を持つ人に対し、評価・訓練・指導を行い、日常生活の質(QOL)向上をサポートします。
言葉によるコミュニケーションに問題がある方に専門的サービスを提供し、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門職です。また、摂食・嚥下の問題にも専門的に対応します。
医療機関、保健・福祉機関、教育機関など幅広い領域で活動し、コミュニケーションの面から豊かな生活が送れるよう、ことばや聴こえに問題をもつ方とご家族を支援します。
言語聴覚士の主な役割
- 言語障害のリハビリ(失語症・構音障害など)
- 聴覚障害の支援(補聴器・人工内耳の指導)
- 発声・発音訓練(吃音・音声障害)
- 摂食・嚥下訓練(食事の飲み込みサポート)
- 高齢者・子どもの言語発達支援
目次
受験資格と難易度
1. 受験資格
言語聴覚士国家試験を受験するには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
① 指定の養成課程を修了する
- 4年制大学の言語聴覚士養成課程を卒業
- 短大・専門学校の2年または3年制の言語聴覚士養成課程を修了
- 他の学士号を持つ人が、2年以上の養成課程(大学・専門学校)を修了
② 海外で言語聴覚士の資格を取得し、厚生労働大臣の認定を受ける
- 日本以外の国で言語聴覚士の資格を取得し、日本の基準に適合すると認められた場合に受験資格を得られる。
2. 試験の難易度
言語聴覚士国家試験の難易度は中程度とされ、基礎から応用までの幅広い知識が求められます。
① 合格率
- 約70~90%(年度によって変動)
- 比較的高めの合格率だが、近年は試験の難化傾向も見られる
② 出題範囲と難易度
- 基礎医学(解剖学・生理学・神経科学)が重要
- 言語・聴覚・嚥下リハビリテーションの理解が必須
- 臨床応用問題(実際の症例を想定した問題)が増加傾向
③ 合格基準
- 総得点の60%以上(年度によって変動)
- 必修問題は80%以上の正答が必要(30問中24問以上)
注意点:試験範囲が広いため、基礎医学・リハビリ技術・臨床応用をバランスよく学習することが重要 となります。
試験内容
1. 試験概要
- 試験形式:五肢択一のマークシート方式
- 試験時間:午前・午後の2部構成
- 合格基準:
- 必修問題の得点率80%以上(30問中24問以上)
- 総合得点の60%以上
2. 試験科目と出題範囲
① 必修問題(30問)
- 言語聴覚士として必要な基礎知識を問う問題
- 80%以上の正答が必要(30問中24問以上)
主な出題内容:
- 言語聴覚士の基本理念・倫理
- 人体の構造と機能(解剖学・生理学)
- 脳神経系と聴覚・言語機能の関連
- 失語症・構音障害・吃音・聴覚障害の基本的知識
- 嚥下(飲み込み)機能の基礎知識
- 医療安全・医療倫理・関連法規(医療法、障害者支援法など)
② 一般問題(170問)
- 基礎から臨床応用までの知識が問われる
- 幅広い専門知識が必要
1. 基礎医学(解剖学・生理学・神経科学など)
- 中枢神経・末梢神経の構造と機能
- 呼吸器・発声器官・嚥下機能の生理
- 聴覚と音の伝達(外耳・中耳・内耳の機能)
2. 言語障害・音声障害・発達障害
- 失語症(原因・評価・リハビリ方法)
- 構音障害(発音の問題・訓練方法)
- 吃音(どもり)の原因・訓練法
- 小児の言語発達障害(自閉症、知的障害との関連)
3. 聴覚障害・補聴器・人工内耳
- 聴覚障害の種類と評価(感音難聴・伝音難聴など)
- 補聴器・人工内耳の適応と使用方法
- 聴覚リハビリテーション(手話・読話・音声訓練)
4. 嚥下障害(摂食・嚥下リハビリ)
- 嚥下のメカニズム(正常な飲み込みのプロセス)
- 嚥下障害の評価法(嚥下内視鏡・嚥下造影検査)
- 誤嚥性肺炎の予防・食事形態の調整
5. 臨床検査・評価法
- 言語・聴覚・嚥下機能の評価方法(標準検査・客観的評価)
- 認知症の評価と言語訓練法
- 脳卒中後のリハビリ計画と実践
6. 医療制度・法律・倫理
- 言語聴覚士法・医療法・介護保険制度
- チーム医療における言語聴覚士の役割
- 医療安全・インフォームドコンセント・個人情報保護
試験対策
1. 効果的な学習方法
① 基礎固め(6~4ヶ月前)
- 教科書・参考書を読み込み、重要ポイントを整理
- 解剖学・生理学・神経科学を重点的に学習
- リハビリテーションの理論を理解する
- 言語障害・聴覚障害・嚥下障害の評価と訓練法を整理
- 医療制度・法律はまとめノートを作る
- 言語聴覚士法・医療法・介護保険法など
② 過去問演習(3~2ヶ月前)
- 最低5年分の過去問を解く
- 「なぜこの答えになるのか?」を理解しながら学習
- 頻出問題を重点的に対策
- 繰り返し出題されるテーマを優先
- 間違えた問題をノートにまとめる
- 弱点を可視化し、集中的に復習
③ 実践力をつける(1ヶ月前~)
- 時間を計って模試形式で演習
- 本番と同じ環境で解く
- 間違えた問題をリスト化し、最後まで克服する
2. 必修問題対策(合格ライン80%以上)
- 基礎医学(解剖・生理・神経科学)を重点的に学習
- 言語・聴覚・嚥下リハビリの基礎知識を整理
- 法律・倫理問題は一問一答形式で対策
3. おすすめの教材・勉強法
① 教科書・参考書
- 「標準言語聴覚学」シリーズ(医学書院)
- 「言語聴覚士国家試験対策テキスト」(医歯薬出版)
② 過去問・問題集
- 厚生労働省の公式過去問サイト
- 「言語聴覚士国家試験 過去問題5年分解説」(中央法規)
③ スマホアプリ・オンライン学習
- 言語聴覚士国家試験対策アプリ(過去問演習に便利)
- YouTubeの言語聴覚士向け講義動画(視覚的に理解しやすい)
取得後に出来ること
1. 医療分野での活躍
① 病院・クリニックでのリハビリテーション
- 脳卒中・頭部外傷後の失語症リハビリ
- 構音障害(発音の問題)の改善訓練
- 嚥下障害(飲み込みの問題)の評価・リハビリ
- 聴覚障害の評価・補聴器適応訓練
② リハビリテーションセンター
- 脳卒中後の言語・嚥下訓練
- パーキンソン病やALSなどの神経難病患者の支援
③ 訪問リハビリ・在宅医療
- 自宅での嚥下・言語リハビリ指導
- 家族・介護者への食事介助方法の指導
- 誤嚥性肺炎予防のための食事指導・姿勢調整
2. 福祉・介護分野での活躍
① 介護施設(特別養護老人ホーム・デイサービス)
- 高齢者の嚥下機能評価・リハビリ
- 認知症患者のコミュニケーション訓練
- 食事形態(とろみ食・刻み食など)のアドバイス
② 障害者支援施設
- 知的障害・自閉症スペクトラム(ASD)の子どもへの言語訓練
- 聴覚障害者のためのコミュニケーション指導(手話・読話)
3. 教育分野での活躍
① 特別支援学校
- 発達障害児(LD・ADHD・ASD)の言語発達支援
- 吃音(どもり)のある子どものスムーズな発話訓練
② 養成校(大学・専門学校)での教員・研究職
- 言語聴覚士養成課程の教員として指導
- 言語・聴覚・嚥下に関する研究活動
4. 企業・研究分野での活躍
① 医療機器・補聴器メーカー
- 補聴器・人工内耳の販売・適合指導
- 聴覚検査機器・嚥下評価機器の開発
② 一般企業(健康管理部門)
- 社員向けの発声トレーニング・滑舌指導
- 音声を使う職業(アナウンサー・声優)の発声指導
5. キャリアアップ・資格の活用
① 認定言語聴覚士
- 特定分野(嚥下・小児・発声・聴覚など)の専門資格を取得
② 大学院進学・研究
- 修士・博士号を取得し、大学や研究機関で活動
- より専門的な知識を深め、リハビリテーションの研究に貢献