建設業界に特化した経理・会計の専門資格です。
建設業は一般の企業会計とは異なり、工事ごとの原価管理や長期間にわたる収支計算が必要なため、専門的な知識が求められます。
この資格を取得することで、建設業における財務管理や決算業務を適切に行うスキルを証明できます。
資格のレベルと役割
建築業経理士は、1級・2級・3級・4級の4つのレベルがあります。
資格 | 役割・業務範囲 |
---|---|
1級 | 建設業会計の高度な知識を持ち、財務分析や経営計画の立案ができる。 |
2級 | 建設業の決算書作成ができ、経理部門の中心的な役割を担う。 |
3級 | 建設業の基本的な会計処理ができ、経理の実務を担当できる。 |
4級 | 経理の入門レベルで、建設業の会計基礎を学ぶ。 |
1級・2級は「建設業経理士」、3級・4級は「建設業経理事務士」と呼ばれます。
特に、1級と2級は建設業法で「経営事項審査」の評価対象となるため、企業の経営にも大きく関わります。
■主催
(財)建設業振興基金
目次
受験資格と難易度
受験資格
建築業経理士試験は受験資格の制限がなく、誰でも受験可能です。
ただし、1級を受験するには2級の合格が必須となります。
試験区分 | 受験資格 |
---|---|
1級 | 2級合格が必須 |
2級・3級・4級 | 誰でも受験可能 |
そのため、初学者はまず3級や2級から挑戦し、1級を目指すのが一般的です。
試験の難易度
建築業経理士試験の難易度は級ごとに異なり、特に1級は難易度が高く、合格率も低めです。
合格率の目安
試験区分 | 合格率(目安) | 難易度 |
---|---|---|
1級 | 10〜20% | 高い(簿記1級レベル+建設業会計の専門知識が必要) |
2級 | 30〜40% | 普通(簿記2級レベルの知識があれば合格可能) |
3級 | 50〜60% | やや易しい(簿記3級程度の知識があれば対応可) |
4級 | 70〜80% | 易しい(簿記初心者向け) |
各級の難易度詳細
1級(最難関)
- 試験科目が3つ(財務諸表・財務分析・原価計算)あり、全て合格する必要がある。
- 出題範囲が広く、建設業特有の財務分析が出題されるため、実務経験がないと難しい。
- 計算問題が多く、短時間で正確に解答するスキルが求められる。
- 簿記1級レベルの知識+建設業特有の原価管理が必要。
2級(中級)
- 建設業の決算業務や工事原価計算がメイン。
- 日商簿記2級の知識があれば、比較的理解しやすい。
- 実務経験があると、さらにスムーズに学習できる。
3級(入門レベル)
- 仕訳・帳簿作成・決算処理など、建設業の基本的な経理知識を問われる。
- 日商簿記3級を持っていれば、ほぼ同じレベルで合格しやすい。
4級(基礎レベル)
- 建設業の会計の基礎を学ぶレベルで、難易度は低い。
- 経理初心者や実務未経験者向け。
試験の合格基準
- 試験は100点満点中70点以上で合格。
- 1級は3科目すべて70点以上で合格となる(科目合格制度あり)。
試験内容
試験概要
試験区分 | 試験科目 | 試験時間 | 出題形式 | 合格基準 |
---|---|---|---|---|
1級 | 財務諸表 / 財務分析 / 原価計算 | 各90分(3科目) | 記述式(計算+理論) | 70点以上(各科目合格制) |
2級 | 建設業の財務会計 / 工事原価計算 | 120分 | 記述式(計算+理論) | 70点以上 |
3級 | 建設業会計の基礎 | 90分 | 記述式(計算+理論) | 70点以上 |
4級 | 経理の基本 | 60分 | 記述式(計算+理論) | 70点以上 |
各級の試験内容詳細
1級(最難関)
1級は、建設業の経理・財務を総合的に理解するための試験で、3科目すべて合格する必要があります。(科目合格制あり)
① 財務諸表
- 建設業の貸借対照表・損益計算書の作成
- 完成工事高・工事未収入金・未成工事支出金の計上
- 減価償却・引当金の処理
- 建設業会計基準に基づいた財務諸表の作成
ポイント
貸借対照表や損益計算書の記入ミスが命取りになる。建設業の特有の勘定科目(工事未収入金、未成工事支出金)を理解することが重要。
② 財務分析
- 経営指標の計算(自己資本比率・売上高利益率・流動比率など)
- 建設業の財務データを基にした経営分析
- キャッシュフロー計算書の作成
- 建設業の経営状況分析と問題点の指摘
ポイント
公式を正確に覚え、計算問題を素早く解く練習が必要。企業の財務状況を分析する力が求められる。
③ 原価計算
- 工事ごとの原価計算(直接原価・間接原価の区別)
- 完成工事原価報告書の作成
- 工事進行基準と完成基準の適用
- 労務費・材料費・外注費の計算
ポイント
建設業では「工事原価の管理」が重要。計算問題が多いため、短時間で正確に解答できるようにする。
2級(中級)
2級は、建設業経理の実務レベルの知識を問う試験で、決算業務や工事原価管理が主な内容。
① 建設業の財務会計
- 仕訳・帳簿記入(売掛金・買掛金・現金・預金)
- 財務諸表の作成(貸借対照表・損益計算書)
- 税金(法人税・消費税)の基礎
- 減価償却の計算
ポイント
一般的な簿記知識と、建設業特有の処理(工事未収入金や未成工事支出金の扱い)を正確に理解することが重要。
② 工事原価計算
- 工事台帳の作成
- 直接費・間接費の配分
- 完成工事高と未成工事支出金の仕訳
- 実行予算と実際原価の比較
ポイント
建設業では、工事ごとに原価を管理するため、計算ミスが致命的。過去問を繰り返し解き、工事原価管理の流れを理解することが大切。
3級(初級)
3級は、建設業の経理の基本を学ぶための試験。
主な出題範囲
- 仕訳・帳簿作成
- 試算表の作成
- 財務諸表の基礎
- 工事原価計算の基本
ポイント
日商簿記3級レベルの知識があれば、十分対応可能。仕訳問題を重点的に対策すると良い。
4級(入門レベル)
4級は、建設業の経理初心者向けの試験。
主な出題範囲
- 経理の基本(現金・預金の管理、仕訳の基本)
- 帳簿の記入
- 財務諸表の概要
- 建設業会計の基礎知識
ポイント
特に難しい内容はなく、経理の基礎を学ぶための試験。これから建設業の経理を始める人向け。
試験対策
学習の基本方針
① 過去問を徹底的に解く
- 出題傾向が一定のため、過去5〜10年分の問題を繰り返し解くのが最も効果的。
- 特に計算問題(財務諸表・原価計算)は出題パターンが決まっているため、繰り返し演習することが重要。
② 計算スピードを上げる
- 試験は時間との勝負なので、電卓を使いこなすことが必須。
- 計算問題を制限時間内に解く練習をし、時間配分の感覚を掴む。
③ 理論問題の対策
- 1級・2級は計算問題だけでなく理論問題も出題される。
- 建設業会計特有の専門用語(工事未収入金、未成工事支出金など)を理解し、記述式問題に対応できるようにする。
④ 実務に即した学習
- 実務経験がある人は、実際の財務諸表や決算書を見ながら学習すると理解が深まる。
- 実務未経験者は、模擬決算書を作成しながら学習すると、試験の理解がしやすい。
試験対策(級別)
1級(最難関)
1級は「財務諸表」「財務分析」「原価計算」の3科目に分かれており、すべて70点以上で合格。
科目合格制度があるため、1科目ずつ受験も可能。
① 財務諸表対策
- 建設業会計基準に基づいた貸借対照表・損益計算書の作成練習をする。
- 工事未収入金・未成工事支出金の処理ができるようにする。
- 減価償却・引当金の処理を理解し、実際に仕訳を切る練習をする。
② 財務分析対策
- 自己資本比率、流動比率、売上高利益率などの指標を正確に計算できるようにする。
- 計算問題が多いため、公式を暗記し、短時間で解けるようにする。
- 企業の経営状況を分析する記述問題もあるため、財務指標の意味を理解する。
③ 原価計算対策
- 直接原価・間接原価の区別を明確にする。
- 工事進行基準と完成基準の計算問題を重点的に練習する。
- 原価差異分析の計算方法をマスターする。
2級(中級レベル)
2級は、建設業の財務会計・工事原価計算がメイン。
日商簿記2級レベルの知識があれば比較的合格しやすい。
① 財務会計対策
- 仕訳問題を繰り返し解き、間違えやすいポイントを整理する。
- 建設業独自の会計処理(工事未収入金・未成工事支出金)を重点的に学習。
- 減価償却・税効果会計の基本を理解する。
② 工事原価計算対策
- 工事台帳の作成方法をマスターする。
- 直接費・間接費の振り分けに注意し、計算ミスを減らす。
- 未成工事支出金の処理方法を理解する。
3級(初級レベル)
3級は、建設業会計の基本を学ぶための試験で、日商簿記3級レベルの内容が中心。
① 仕訳・帳簿作成対策
- 過去問を繰り返し解き、建設業特有の仕訳を理解する。
- 試算表の作成方法をマスターする。
- 工事原価計算の基礎(材料費・労務費・外注費の区別)を覚える。
4級(入門レベル)
4級は、経理初心者向けの試験で、難易度は低め。
建設業の経理を初めて学ぶ人に適している。
対策ポイント
- 基本的な仕訳を覚える。
- 現金・預金管理の仕組みを理解する。
- 簡単な財務諸表の読み方を学ぶ。
取得後に出来ること
資格取得後にできる主な業務
① 建設会社の経理・会計業務
- 工事ごとの財務管理(決算・税務処理)
- 工事台帳の作成・管理(工事ごとの収支計算)
- 請求書・支払管理、建設業特有の仕訳処理
建設業では、一般の経理とは異なり、工事ごとの原価管理や未成工事支出金の処理が重要です。
資格を取得することで、建設業に特化した経理スキルを証明できます。
② 経営事項審査(経審)の加点
- 2級以上を取得すると、建設業法に基づく「経営事項審査(経審)」で加点対象となる。
- 経審の評価が上がると、公共工事の入札で有利になる。
- 1級を取得すれば、より高い評価を得られ、会社の信用力が向上する。
公共工事を受注する建設会社にとって、建築業経理士の有資格者がいることは重要な経営戦略の一つとなる。
③ 建設業の財務分析・経営戦略の立案
- 1級取得者は、建設会社の財務分析や経営計画の策定が可能。
- 利益率の向上やキャッシュフローの改善に貢献できる。
- 企業の財務データを基に、経営者へのアドバイスができる。
特に1級を取得すると、建設会社の経営戦略に関わる重要なポジションで活躍できる可能性が高まる。
資格取得後のキャリアパス
① 建設会社の経理部門でのキャリアアップ
- 2級以上を取得すると、建設会社の経理担当者として昇進や給与アップが期待できる。
- 1級取得者は、財務部門の管理職や経営幹部候補としてのキャリアを目指せる。
② 税理士・会計士などの上位資格を目指す
- 建築業経理士1級の知識は、税理士試験や日商簿記1級と一部共通しているため、上位資格へのステップアップが可能。
- 税理士資格を取得すれば、建設業専門の税理士として独立も可能。
③ 独立・コンサルタント業務
- 建設業の財務コンサルタントとして、経営改善や財務分析の支援ができる。
- 建設業特化の経理代行サービスを提供し、独立開業することも可能。
建築系資格一覧
一級建築士
二級建築士
木造建築士
構造設計一級建築士
設備設計一級建築士
建築施工管理技士
建築図面製作技能士
土木施工管理技士
ビル経営管理士
不動産鑑定士
測量士
宅地建物取引主任者
管理業務主任者
マンション管理士
土地家屋調査士
玉掛技能講習
環境計量士
管工事施工管理技士
建設機械施工技士
建築設備士
建築業経理士
コンクリート技士
CAD実務キャリア認定制度
CADトレース技能審査
建築CAD検定試験
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マンションリフォームマネージャー
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マンション維持修繕技術者
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