ネットワークスペシャリスト試験(NW)は、大規模で高信頼なネットワークシステムを設計・構築・運用できる専門人材を対象とした、IPAの高度区分に位置する国家試験です。ルーティングやスイッチングだけでなく、無線LAN、DNS、メール、VPN、負荷分散、冗長化、クラウド接続、セキュリティ、障害解析まで、ネットワーク全体を設計・運用する力が問われます。
ネットワークスペシャリスト試験を30秒で確認
- ネットワーク専門人材向けの高度国家試験
- 2026年度はCBT方式・前期試験として実施
- 科目A-1:50分30問、A-2:40分25問
- 科目B-1:90分・3問中2問、B-2:120分・2問中1問
- 2025年度春期の合格率は17.8%
- 設計・障害解析・セキュリティ・運用まで総合的に問われる
- 一定条件で科目A-1免除が利用できる
- 現行のNW試験区分は2026年度で終了し、2027年度から新試験制度へ移行予定
| 資格名 | ネットワークスペシャリスト試験 |
|---|---|
| 略号 | NW |
| 英語名称 | Network Specialist Examination |
| 資格種別 | 国家試験 |
| 実施団体 | 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA) |
| 位置づけ | 高度試験・レベル4相当 |
| 2026年度方式 | CBT方式・前期 |
| 受験資格 | 制限なし |
| 受験手数料 | 7,500円(税込) |
| 主な対象 | ネットワークエンジニア、インフラエンジニア、社内ネットワーク設計・運用担当 |
ネットワークスペシャリスト試験とは
ネットワークスペシャリスト試験は、企業や組織の要求を理解し、目的に合ったネットワークシステムを設計・構築・運用・保守できる専門人材を評価する試験です。
IPAが示す技術水準では、ネットワーク技術・サービスの動向を見通し、適切な技術を選択できること、要求仕様を作成できること、プロトコル・信頼性・セキュリティ・コストまで評価して論理設計・物理設計ができることなどが求められています。
「Cisco機器の設定試験」ではない
特定ベンダーのコマンド操作を覚える試験ではありません。技術選定、設計理由、冗長化、障害対応、セキュリティ、通信事業者やベンダーとの調整まで含めて、ネットワーク全体を考える力が必要です。
試験概要
| 科目 | 時間 | 形式 | 出題数 | 解答数 |
|---|---|---|---|---|
| 科目A-1 | 50分 | 四肢択一 | 30問 | 30問 |
| 科目A-2 | 40分 | 四肢択一 | 25問 | 25問 |
| 科目B-1 | 90分 | 記述式 | 3問 | 2問 |
| 科目B-2 | 120分 | 記述式 | 2問 | 1問 |
2026年度からCBT方式へ移行し、従来の「午前Ⅰ・午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱ」は「科目A-1・A-2・B-1・B-2」に名称変更されました。試験時間・出題数・解答数自体は変更されていません。
CBT化しても、B-1・B-2は記述式
画面で受験する方式に変わっても、長文事例を読み、設計理由・原因・対策を記述する力が必要です。選択式中心の試験とは学習方法が異なります。
2026年度前期の実施期間
| 申込受付 | 2026年10月6日10時〜10月24日17時 |
|---|---|
| 科目A-1・A-2 | 2026年10月17日〜10月27日 |
| 科目B-1・B-2 | 2026年11月11日〜11月23日 |
| 科目間休憩 | A-1とA-2の間、B-1とB-2の間に各10分 |
科目A-1では何が出る?
科目A-1は高度試験共通の知識問題です。ネットワークだけではなく、コンピュータ構成、データベース、セキュリティ、開発、プロジェクト管理、サービス管理、経営戦略などを幅広く問います。
| 分野 | 主な内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 基礎理論 | 論理、アルゴリズム、性能計算 | 頻出計算を反復 |
| コンピュータ | CPU、OS、仮想化 | 構成と性能を整理 |
| DB | SQL、正規化、トランザクション | 基礎を落とさない |
| セキュリティ | 暗号、認証、脅威 | NWとの関連で理解 |
| 開発・管理 | 設計、テスト、PM、サービス管理 | 役割の違いを整理 |
| ストラテジ | 経営、法務、会計 | 技術者でも軽視しない |
科目A-2では何が出る?
科目A-2はネットワーク専門知識を短時間で確認する科目です。IP、ルーティング、LAN、無線、プロトコル、負荷分散、冗長化、セキュリティなどが中心です。
| テーマ | 主な内容 | 重点ポイント |
|---|---|---|
| IP | IPv4/IPv6、サブネット、経路制御 | アドレス計算・経路選択 |
| ルーティング | OSPF、BGP等 | 使い分けと障害時の挙動 |
| LAN | Ethernet、VLAN、STP | ループ・冗長化 |
| 無線LAN | IEEE 802.11、認証、暗号 | 規格とセキュリティ |
| DNS | 名前解決、キャッシュ、権威サーバ | 問い合わせの流れ |
| メール | SMTP、POP、IMAP、SPF/DKIM/DMARC | 配送となりすまし対策 |
| VPN | IPsec、SSL-VPN | トンネルと暗号化 |
| 負荷分散 | L4/L7、ヘルスチェック | 可用性・分散方式 |
| セキュリティ | FW、WAF、IDS/IPS、ゼロトラスト | 配置と役割 |
| クラウド接続 | VPN、専用線、ハイブリッド | 冗長性・経路設計 |
科目A-2で苦戦しやすいテーマ
| テーマ | 難しい理由 | 対策 |
|---|---|---|
| サブネット | 計算速度が必要 | CIDRを手計算で反復 |
| OSPF/BGP | 経路選択条件が多い | 小さい構成図で追う |
| STP | ルート選出・ポート状態が複雑 | 構成図を書いて決定順を追う |
| IPv6 | IPv4との違いが多い | アドレス・近隣探索・移行技術を比較 |
| メール認証 | SPF/DKIM/DMARCが混同しやすい | 誰が何を検証するか整理 |
科目B-1の特徴
科目B-1は90分で3問中2問を解答します。中〜長文のネットワーク事例を読み、構成、通信、障害、セキュリティ、設計意図などを記述します。
| 出題テーマ | 問われやすい内容 |
|---|---|
| LAN設計 | VLAN、STP、冗長化、L3スイッチ |
| WAN | 拠点間接続、VPN、回線冗長 |
| クラウド | VPC/VNet、VPN、専用線、経路設計 |
| DNS | 名前解決障害、冗長化、キャッシュ |
| Web | LB、リバースプロキシ、TLS |
| メール | 配送、迷惑メール、認証 |
| 無線LAN | チャネル、認証、ローミング |
| 障害対応 | ログ・構成図・通信状態から原因特定 |
科目B-1の時間配分
| 問題選択 | 5分程度 |
|---|---|
| 1問目 | 40分程度 |
| 2問目 | 40分程度 |
| 見直し | 5分程度 |
3問すべてを深く読んでから選ぶと時間を失います。最初にテーマ・構成図・設問を確認し、自分の得意分野に近い2問を早めに選ぶことが重要です。
科目B-2の特徴
科目B-2は120分で2問中1問を解答します。B-1よりも問題文が長く、設計・障害・改善・移行など複数の論点を横断して問われます。
B-2は「なぜそう設計するか」を説明する試験
単に正しいプロトコル名を書くのではなく、可用性、性能、セキュリティ、運用性、コストなどの要求と結び付けて設計理由を説明できる必要があります。
B-2で意識したい設計観点
| 観点 | 確認内容 |
|---|---|
| 可用性 | 単一障害点がないか、冗長化されているか |
| 性能 | 帯域、遅延、負荷分散が適切か |
| セキュリティ | 認証、暗号化、アクセス制御が適切か |
| 運用性 | 監視、障害切り分け、変更がしやすいか |
| 拡張性 | 拠点・利用者・トラフィック増加に対応できるか |
| コスト | 過剰設計になっていないか |
長文問題の読み方
- 最初に設問をざっと読む
- 構成図の機器名・IP・VLAN・回線を確認
- 変更前と変更後を区別する
- 障害発生前後の条件を整理する
- ログやパケットの流れを時系列で追う
- 本文中の根拠を使って記述する
構成図は自分で書き直す
複雑なネットワーク構成では、問題冊子の図を見るだけでなく、自分なりに簡略化して「どこからどこへ通信するか」を書き直すと理解しやすくなります。
通信経路を一方向だけで考えない
往路が通っても戻り経路が異なると通信できない場合があります。特にルーティング、FW、NAT、ロードバランサ、VPNが絡む問題では、戻り通信まで確認します。
「設定値」より「通信の結果」を考える
ネットワーク試験では、コマンドや設定名を暗記するだけでは不十分です。その設定によって、どのパケットがどの経路を通り、どこで許可・拒否されるかを考えます。
難易度・合格率
ネットワークスペシャリストは高度試験の中でも専門性が高く、長文記述と設計判断が必要な難関試験です。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2025年度 春期 | 11,948人 | 2,126人 | 17.8% |
合格率だけを見ると2割弱ですが、受験者にはネットワーク実務経験者やAP合格者も多く含まれます。専門知識に加えて、B-1・B-2での記述力を仕上げる必要があります。
勉強時間の目安
IPAは必要学習時間を定めていません。以下は当サイトの目安です。
| 受験者タイプ | 目安 | 重点 |
|---|---|---|
| AP合格・NW未経験 | 300〜500時間 | NW基礎+B問題 |
| NW実務1〜3年 | 200〜350時間 | 試験範囲の穴埋め+記述 |
| インフラ実務3年以上 | 150〜300時間 | 非経験分野+B-2 |
| CCNA保有 | 220〜400時間 | 設計・記述・高度プロトコル |
| CCNP相当の経験 | 150〜280時間 | IPA形式と記述対策 |
勉強方法
1. TCP/IPを説明できる状態にする
OSI参照モデルを暗記するだけではなく、Webアクセス時にDNS、ARP/ND、TCP、TLS、HTTPがどの順序で動くかを説明できる状態を目指します。
2. サブネット・ルーティングを手で解く
CIDR、最長一致、静的経路、OSPF、BGPなどは、構成図を使って「このパケットはどこへ行くか」を追います。
3. 冗長化を整理する
STP、VRRP等のゲートウェイ冗長化、リンク冗長化、回線冗長化、DNSやロードバランサによるサービス冗長化など、どの層を冗長化しているかを整理します。
4. セキュリティをネットワーク設計の一部として学ぶ
FW、WAF、IDS/IPS、VPN、TLS、認証、ゼロトラストなどを別分野として暗記せず、実際の通信経路のどこに配置し、何を守るかで理解します。
5. B-1・B-2は必ず自分で答案を書く
解説を読むだけでは記述力が身につきません。時間を測って解き、解答例と比較して「本文根拠」「必要キーワード」「不要な説明」を確認します。
6か月学習プラン
| 期間 | 学習内容 | 到達目標 |
|---|---|---|
| 1か月目 | TCP/IP、IPv4/IPv6、LAN | 通信経路を説明できる |
| 2か月目 | ルーティング、冗長化 | 経路選択・障害時動作を理解 |
| 3か月目 | DNS、メール、VPN、無線 | 主要サービスを整理 |
| 4か月目 | セキュリティ、クラウド | 設計上の対策を説明 |
| 5か月目 | B-1過去問 | 90分で2問処理できる |
| 6か月目 | B-2通し演習 | 120分で1問を完答 |
不合格になりやすいパターン
| 失敗 | 原因 | 改善 |
|---|---|---|
| 資格教材だけ読む | 実際の通信をイメージできない | 構成図・パケット経路を描く |
| CCNA知識だけで挑む | 記述・設計対策不足 | IPAのB問題を解く |
| B-2を後回し | 長文慣れ不足 | 早期から月1〜2問解く |
| 設問を読まず本文から読む | 必要情報を見失う | 先に設問要求を確認 |
| 一般論を書く | 問題条件を無視 | 本文の具体条件を根拠にする |
科目A-1免除制度
高度試験では、一定の条件を満たすと科目A-1を免除できます。APや他の高度試験、SCなどとの関係で免除対象になる場合があります。
免除できる人はA-2・B対策へ時間を集中
申込前に自分が免除対象か確認してください。免除制度を利用できる場合、試験当日の負担と学習範囲を減らせます。
ネットワークスペシャリストを取得するメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 専門知識を体系化 | LAN/WAN、プロトコル、セキュリティ、運用を横断できる |
| 設計力を示しやすい | 単なる設定作業ではなく設計・判断力を問う |
| ベンダーニュートラル | 特定メーカーに依存しない考え方を学べる |
| 上流工程に活かせる | 要件定義、設計、ベンダー調整に役立つ |
| 他分野へ展開 | クラウド、セキュリティ、SRE等へ知識を転用しやすい |
活かせる仕事
| 職種 | 活かせる領域 |
|---|---|
| ネットワークエンジニア | 設計、構築、運用、障害解析 |
| インフラエンジニア | サーバー・NW・クラウド連携 |
| クラウドエンジニア | VPC/VNet、VPN、専用線、LB |
| 社内SE | 拠点網、無線LAN、ベンダー管理 |
| セキュリティエンジニア | FW、VPN、通信監視、ゼロトラスト |
| SRE | 可用性、負荷分散、障害解析 |
どんな人に向いている?
| タイプ | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| NW実務者 | 非常に高い | 経験を体系化できる |
| AP合格者 | 高い | 専門資格として自然 |
| クラウドエンジニア | 高い | クラウドNW設計の基礎を強化 |
| CCNA保有者 | 高い | ベンダー中立の設計力を補強 |
| IT初心者 | 低い | FE/APや基礎NWからが現実的 |
CCNA・CCNPとの違い
| 資格 | 特徴 | 得意領域 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| CCNA | Cisco認定・基礎〜実務 | Cisco機器、NW基礎 | NW初心者〜若手 |
| CCNP | Cisco認定・上位 | 実装・設計・トラブル対応 | Cisco環境の実務者 |
| NWスペシャリスト | 国家試験・ベンダー中立 | 設計、判断、長文記述 | 中堅〜上級NW人材 |
両方取る意味はある?
あります。CCNA/CCNPは製品・実装寄り、NWスペシャリストはベンダーニュートラルな設計・判断・記述寄りです。実務でCisco機器を扱う人ほど、両方の知識が補完関係になります。
応用情報・SCとの違い
| 資格 | 重点 | 対象 |
|---|---|---|
| 応用情報技術者 | IT全般 | 中堅IT人材 |
| ネットワークスペシャリスト | ネットワーク設計・運用 | NW専門人材 |
| 情報処理安全確保支援士 | セキュリティ | セキュリティ専門人材 |
2026〜2027年度の制度変更
2026年度は現行ネットワークスペシャリスト試験の大きな転換点です。CBT方式へ移行しましたが、現行のNW試験区分は2026年度の実施をもって終了予定です。
| 時期 | 変更 |
|---|---|
| 2025年度まで | ペーパー方式、午前Ⅰ・午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱ |
| 2026年度 | CBT方式、A-1・A-2・B-1・B-2へ名称変更 |
| 2026年度 | 前期試験として実施 |
| 2026年度終了後 | 現行NW試験区分は終了予定 |
| 2027年度 | 8試験区分からなる新制度へ移行予定 |
2027年度は「ネットワークスペシャリスト」という独立区分の継続を前提にしない
IPAが公表している2027年度の新制度予定では、従来のNWを含む複数の高度区分を再編し、「プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験(仮称)」などへ移行する方向です。2027年度受験を考える場合は、新制度の正式名称・シラバスを必ず確認してください。
よくある質問
応用情報に合格していなくても受験できますか?
受験資格にAP合格は必要ありません。ただし、A-1でIT全般の知識が必要なため、AP相当の基礎がある方が学習しやすいです。
CCNAを持っていれば簡単ですか?
有利ですが、十分ではありません。NWスペシャリストでは、ベンダー中立の設計判断や長文記述が必要です。B-1・B-2対策を別途行う必要があります。
実務経験がなくても合格できますか?
可能ですが難易度は高くなります。仮想環境やクラウドでネットワークを構成し、ルーティング・VLAN・FW・VPNなどを実際に試す学習がおすすめです。
科目BではCiscoコマンドを書きますか?
特定ベンダーのコマンド操作を直接問う試験ではありません。設計、通信、原因、対策などを記述します。
IPv6は勉強した方がいいですか?
はい。IPv4だけでなくIPv6、デュアルスタック、近隣探索、移行技術なども理解しておく方が安全です。
クラウドネットワークも出ますか?
クラウド接続、VPN、専用線、ロードバランサ、セキュリティなど、現代的なネットワーク設計を意識した問題に対応できる知識が必要です。
独学で合格できますか?
可能です。IPAの過去問題・解答例・採点講評を中心に、専門書と実機・仮想環境を組み合わせると効果的です。
2027年度にも同じNW試験を受けられますか?
現行のネットワークスペシャリスト試験区分は2026年度で終了予定です。2027年度は新制度へ移行するため、正式な試験区分を確認してください。
ネットワークスペシャリスト試験のまとめ
ネットワークスペシャリスト試験は、単なるネットワーク用語や機器設定ではなく、要求分析、設計、冗長化、障害解析、セキュリティ、運用までを総合的に評価する高度国家試験です。科目A-2で専門知識を固め、科目B-1・B-2では構成図と通信経路を読みながら、問題文の条件を根拠に設計理由や対策を記述する力を身につけることが合格のポイントです。
情報確認:2026年10月
主な確認先:IPA「ネットワークスペシャリスト試験」「令和8年度前期試験について」「応用情報技術者試験、高度試験及び情報処理安全確保支援士試験におけるCBT方式での実施について」「令和7年度春期試験 合格発表」「試験制度の見直しについて」。
